盛岡タイムス Web News 2012年 2月 3日 (金)

       

■ 〈潮風宅配便〉84 草野悟 あんなこんなたくさんの思い出

     
   
     
  ある小さな保育園。
  男の子が「直すよ」って。
  何を直すの?と聞いたら、「僕が直す」って。
  寒くなってきたら、去年の3月を思い出します。
  がれきに水仙が咲いていました。潮をいっぱいかぶった塩田みたいな土地で。
  新幹線みたいにスピードが速く、毎日の出来事の中身が濃く。
  それでもあっという間。
  いったい何をしてきたんだろうと反省です。
 
  生き延びた友達がいます。
  別の土地、と言っても同じ沿岸ですが、自分の家を全部無くしたくせに、人がいいのか、別の被災地で汗水垂らして村のために取り組んでいます。
  もう一人の友人は、建てたばかりの工場を無くし、「もう生きられない」と。
  思い出す言葉です。
  その友人は、がむしゃらに前のような「味」を求めて、「工場を直す」と。
  なんか、男の子と同じです。
  水仙の後に、桜が咲きました。
  涙の枯れた奥さんがいました。大好きなお父さんでした。
  そして僕の友でした。
  ほんとうに小さな船でしたけど、無くなって困っているお年寄りの漁師さんがいました。
  お金も無いと。
  「今したいのは鮑(あわび)獲りだ」と。
  海の底を覗くガラス箱と鮑漁の必需品の鉤(かぎ)もなくなりました。
  海を見ています。「恐かった、でも漁師だから、朝日も見たいし」と。
  巨大な防潮堤を恐がっていました。
 
  小さな食堂でお父さんの獲ってきた海の恵みで細々と料理を創ってきたお母さん。
  おいしい料理でした。
  「お金は無かったけど幸せでした」って。
  「もう一度始めます」と便りがきました。涙が出ました。
 
  山の中で全く被災はないけど、それだけに「申し訳ない」という老ご夫婦。
  「何とか浜の人たちに恩返しをしたい」と。
  山奥の村人を集めて「秋祭り」を開きました。
  村人たちは、野菜を持ち寄ったり、団子を作ったり、熊汁を作ったり、一生懸命販売しました。
  全額を持ってきて、「これ、何とか少しでもお役に立てば」と持参してくれました。
  人って、本当にすてきです。
  小さい子からお年寄りまで、岩手の「こころ」がいっぱいです。
(岩手県中核観光コーディネーター)

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