盛岡タイムス Web News 2012年 2月 7日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉141 及川彩子 迷宮都市の広場

     
   
     
  イタリア暮らしで、特に気に入っているのが、どの町にも中心に広場があることです。

  中世以来の都市設計の賜物か、教会を中心とするこの広場の周辺には、役所があり、商店街が広がり、時に青空市場が開かれ、いつも人々でにぎわっています。

  ヴォルフ・フェラーリのオペラ「イル・カンピエッロ=小広場」でも、遠い町に嫁ぐ娘が「時が経ち、どんなに汚れてしまおうと、愛した町の広場のことは忘れない」と歌うアリアがあるほど、故郷の広場は、心の原風景につながっているのです。

  先月、冬のバカンスに、私たち家族は、南アフリカのモロッコの古都マラケシュを訪ねました。大西洋岸とサハラ砂漠の交易の中心マラケシュは、民族と文化の交差点。1千年前と変わらぬ生活を守り続けているこの旧市街は、世界遺産にも登録されています。

  流ちょうな日本語を話すモロッコ人ガイド、モハメドさんの案内で旧市街へ。城壁に囲まれたこの街は、世界最大と言われる迷宮都市で、路地が網の目のように広がっていました。

  荘厳なモスク、職人工房、商店街、エキゾチックな中庭を持つ民家、公衆浴場などが建ち並ぶその先に、街の代名詞とも言われる大広場がありました〔写真〕。

  大広場は「フナ広場」と呼ばれ、その中に、さまざまな露店がひしめき、羊の丸焼き屋台から立ち上る煙の中を、大声を上げて行き交う馬車、ロバの荷車、水売りの鐘の音。地べたに座り込んで笛を吹くヘビ使い、大道芸人、民族ダンス、猿回し、そして入れ歯売り…。

  モハメドさんの計らいで、広場一角の屋上テラスから大広場を見下ろすと、どこから集まって来るのか、まさに民族のるつぼ。お祭りのようなにぎわいが、毎日続くというのですから驚きです。

  集い、楽しみ、踊り、食べる生活そのものの「フナ広場」。サハラの古都に、しばしくぎ付けになりました。

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