盛岡タイムス Web News 2013年  9月  4日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉187 三浦勲夫 航時機


 白河法皇は自分の意のままにならぬ物の例として「加茂川の流れ、賽の目、山法師」と言った。SF小説では数々の新型機械がこれまでに登場し、その後、現実的にも多くが製作された。まだ製作されていない物に、タイムマシン(航時機)がある。それに乗って過去や未来へと自由に旅する乗り物である。

  たまたま、きょう(8月22日)、1400光年離れた空間に新しい星(原始星)が誕生し、2種類のガスを噴出しているのがアルマ望遠鏡で発見されたというニュースを聞いた。例えば、きょう望遠鏡で観測した星は、実は1400年前の姿である。その星のきょう時点の姿は、地球上では1400年後でなければ見られない。光は1秒間で地球を7回り半する。それだけの超高速度で1400年かかる距離である。その星が誕生して700年後の姿をきょう見ようとすれば、光速の2倍の別の光が必要になる。それがない限り不可能な話となる。

  観察対象が光と同じ速度で地球から遠ざかるとき、地上の望遠鏡でこれを観察すると、常に観察開始時点の姿を見ることになる。時間は停止しているように見えるだろう。このあたりまでは想像できるが、それ以上のことは私などの門外漢には分からない。過去や未来の世界に旅をする乗り物が作られるなどとは考えられない。白河法皇ではないが絶対、「意のままにならない」ことだと思う。

  仮死状態だった人や動物や植物は生き返る。それとは違って完全に死んだ物が生き返ることはまずありえない。想像の世界でならあり得る。この世と別の世との結びつきは超音速航空機、いや超光速航空機でも不可能だ。しかし想像力の世界ならこれまでも可能だった。みこや霊媒を介して現実界の人間が別世界に旅立った人、あるいは現実世界のどこかにいる人と交流する話はよく聞く。

  マンモスの遺骸が凍土から発見される。保存状態が良いので遺伝子を取り出して再生を試みるというニュースは聞いた。その後、成功したのか失敗したのかのニュースは聞かない。エジプトのミイラが再生されて生き返ったら後世の人類全体が驚愕するだろう。それ以上に生き返らせられたミイラが驚がくするだろう。何千年後の世界に対して「適応障害」を呈するだろう。これは遺伝子操作や試験管ベビーとは別の話である。

  しかし想像の翼を広げるのも面白い。きょう発見された1400光年かなたに誕生した星。2種類の気体を噴出しているという。もし仮に、この星に有機物が生成し、生命が誕生し、何千年、何万年をかけて進化して、地球上の人類に相似した生物ができるとする。いや「現地」では、すでに現時点で誕生以来1400年を経ている。何らかの生物が誕生している可能性もありうる。それを地球上からは残念ながら現時点では確認できない。確認するには光速よりも早い媒体を必要とするだろう。

  天体に思いをはせると地球上の争いが小さく見える。山の頂上に立つと下界(人間界)が小さく見える。時には自分が立つ足場を変えてみる必要がある。国際宇宙ステーション(ISS)に若生光一さんがソユーズで出発する日は今年末。地球とはまた別次元の重力や時間の世界である。この世と別世界をつなぐ場所がそこにある。
(岩手大学名誉教授)


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