盛岡タイムス Web News 2013年  10月  13日 (日)

       

■  玉山区の八丸健さん ドイツで特別賞 ワーキング・ホースの祭典で 馬と復興のまちづくり 宮城県東松島市 夫妻で取り組む


     
  8月にドイツで開かれたワーキングホースの祭典でホースロギング競技に出場した八丸健さん(八丸さん提供)  
  8月にドイツで開かれたワーキングホースの祭典でホースロギング競技に出場した八丸健さん(八丸さん提供)
 

 盛岡市玉山区で馬の牧場「八丸牧場」を経営している八丸健さん(42)は、8月にドイツのデトモルトで開催された、ワーキング・ホースの祭典(ヨーロッパ・ワーキング・ホース連盟の主催)に招待され、ホースロギング(馬搬)競技で特別賞の「ノン・ヨーロピアン賞」を受賞した。馬事関係者との国際交流は、妻の由紀子さん(43)と牧場を立ち上げたときから胸に抱く「馬を活(い)かし、馬に活かされる心豊かな社会」の実現に向け、背中を押してくれる体験だった。夫妻は東日本大震災津波で大きな被害を受けた宮城県東松島市で、馬を活用した森と復興のまちづくりに挑戦している。

  同祭典は、ヨーロッパ諸国を中心に馬200頭、関係者約2万人が参加する「働く馬」の一大イベント。丸太の馬搬や馬耕、馬車など人馬一体となった競技が繰り広げられる。ワーキングホースのヨーロッパチャンピオンシップを兼ね、各地の予選を勝ち抜いた人馬が出場。自然や馬との共生を目指す関係者の情報交換の場ともなっている。

  健さんは昨年、英国で開かれたヨーロッパチャンピオンシップに仲間と一緒に挑戦。欧州の馬事関係者と交流を深める中で、同祭典へ招待された。

  ホースロギング競技は、太さ約30a、長さ約6bの丸太を、馬を使って制限時間内に移動させる競技。途中、木立に見立てた狭いスペースを通過する、声だけで馬を誘導する、ぬかるみを歩くといった課題をクリアしなければならず、馬とのパートナーシップ、コミュニケーション能力が問われる。

  「馬の感情をいかに読み取るか。目標達成や成果を急いではうまくいかない。馬に寄り添いながら一つ一つのプロセスを整えていくことが大事」と健さん。技術を競う以上に、暮らしに息づく馬と人との絆に触れられたことが何よりの収穫だった。

  ヨーロッパでは大量生産や効率至上主義が少しずつ見直され、持続可能な産業や社会の在り方が実践されつつある。馬を活用した森の間伐作業や農耕は、重機を用いた作業より効率は劣るが、自然に負荷をかけず、人が自然の恵みや厳しさを体感するチャンスを増やす。森に新たな雇用の場を生むことにもつながるという。

  健さんは「馬と人が森の中で働くことで得られる効果は大きい。ヨーロッパのやり方を全てまねるのではなく、参考にしながら、日本の地域に合った馬の活用を考えていきたい。自分自身を磨きながら、地域貢献にもつなげていきたい」と力を込める。

  八丸さん夫妻は現在、宮城県東松島市で馬を使って森林を整備する復興事業「美馬森プロジェクト」に取り組む。被災地支援活動で知り合った、C・W・ニコルさんが理事長を務める財団が管理する市有林約8・4fを舞台に、馬搬による林道整備などを実施。3年後をめどに、この森のそばに牧場を移転し、体験型観光やホースセラピー、環境教育などを一体的に展開する計画だ。将来的には高齢者や地域住民が相互に交流する複合住宅などの整備も目指す。

  今年3月に一般社団法人「美馬森Japan」を設立し、馬を生かした森の整備や牧場と一体となったまちづくりを同市に提案。環境未来都市の創造を掲げる同市は、森の一部を整地して被災者の高台移転用地を整備する予定で、八丸さん夫妻の提案を採用した。

  夫妻は、乗馬の体験事業や馬搬による林道整備などの実績を重ねながら、牧場移転に必要な土地利用手続きや資金集めに奔走している。

  由紀子さんは「どうしたら、大好きな馬たちの活躍機会を創れるかということをテーマに模索を続けてきた。馬には人を集める力がある。働く馬たちの力を借りて、環境やメンタルヘルス、教育など現存する社会課題を同時に解決する環境未来モデルを構築したい」と前を見据える。
 


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