盛岡タイムス Web News 2013年  10月  16日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉355 伊藤幸子 岩手芸術祭音楽会


 汗が一滴若きピアニストの額(ぬか)に垂るわがせぬ楽(がく)のうつくしきかな
                                        前田透

 10月5日、「第66回岩手芸術祭〜岩手芸術復興支援フェスティバル」が開催された。岩手県民会館にて午後0時35分開場ということで、私も2時間ぐらい前から並んだ。前日はうれしいことがあった。4日付の新聞で「岩手芸術祭・県民文芸作品集第44集」の入賞発表があり、知り合いのKさんがある部門の芸術祭賞に輝いた。すぐ電話でお祝いを申し上げると、全然知らなかったと言われ大喜び。偉い先生なのに、つい同年齢の親しみで笑ってしまう。

  私は芸術祭入場整理券が2枚あるので、現地集合することにした。「文化庁 地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ 3・11復幸音楽会」と銘打って、記念式典のあと音楽会。3部構成で歌の絆、民謡の絆、音楽の絆として「復幸」に変えるべく高い芸術性と総合プロジェクトの完成美に感じ入った。

  ステージ映像では高田松原の啄木歌碑や、「ひょっこりひょうたん島」も映り、スクリーンの前で大槌小の児童たちによる金管バンドの演奏。昭和の風景がよみがえり、井上ひさしさんもひょっこり覗いているかなと思われた。

  今や全国区の福田こうへいさん、臼澤みさきちゃんはじめ南部民謡の切々たる生命力は万人の胸を打つ。たった2曲のこうへいさんに「アンコール!」の声をかけそびれた。また、津波のときはスタコラ逃げよとの「スタコラ音頭」も披露されて軽妙な踊りに拍手。津波てんでんこの涙を笑いに変える歌の力。

  テノール独唱による復興への歌声「アヴェ・マリア」そして「朝の歌」はジョン・健・ヌッツォさんの歌。陸前高田出身のメゾ・ソプラノ菅野祥子さんの「春なのに」。これはウィーンから故郷を想って作られた曲と説明があった。

  「ピアノコンチェルトによる名曲への誘い」若いピアニスト佐藤彦大(ひろお)さんの演奏は、前列3番目中央の席からよく見えて、額の汗も息つぎの表情も体温までも感じとれるようだった。

  さて、復興支援オリジナル曲「ふるさとの風」が本会場で初めて発表された。工藤玲音さん(盛岡市玉山区出身)作詞、さだまさしさん(今回はビデオ出演)作曲、渡辺俊幸さん編曲のスペシャルオーケストラの大ステージ。「ふるさとは 夢の旅立つところ」であり「夢の帰るところ」と歌う。そして「風よ風よ風よ ふるさとの風よ 愛しき人を守りたまえ」とのリフレインがさざなみと化す。濃密な時間、私は何度もこみ上げるものを押さえ、動悸(どうき)しやまぬ感情を全身で包み込んだ。
    (八幡平市、歌人)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします