盛岡タイムス Web News 2013年  10月  29日 (火)

       

■   〈詩人のポスト〉「黒い喪服に身をつつみ」かしわばらくみこ



座席にすわり 姿勢を正すと
一瞬、まばらに視線をあつめて
十一時三三分ちょうどに
電車がホームをすべりだしました

奥羽山脈の稜線
鰯雲
四辺(あたり)をこがね色にくゆらす稲穂
線路沿いの芒
車窓が秋の日を切り撮りながら
鉄の路を加速していきます

談笑している老婦人ふたりの
突き合わせた膝や
ちいさな男の子のお行儀のよい両手
そのお母さんの口もと
通り過ぎた駅の名

わたしがこの世を去るときは
それぞれが、まちまちの駅に降り立ち
それだけのことで
ただの偶然の出合い
今日のような景色を道連れに
往くのではないか

(血 は遠くでわたしの名を呼び)

秋の陽が射す車両で
わたしだけが黒い影となり
現象を眺めていると
今から向かう用事を置き去りにして
このまま何処かへ
往くような気がしてきます


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