盛岡タイムス Web News 2014年  4月   10日 (木)

       

■  〈風の筆〉45 沢村澄子 「縄文杉まで歩く」


     
   屋久島、高塚山の縄文杉。樹高25.3b。幹回り16.4b。推定樹齢2000〜7200年  
   屋久島、高塚山の縄文杉。樹高25.3b。幹回り16.4b。推定樹齢2000〜7200年
 

 図らずも突如、鹿児島まで来たのだから、この際、屋久島まで渡ろうと考えた。

  鹿児島港から高速船で種子島を経由して2時間半。夕陽がちょうど山の向こうに沈む頃、島に着いた。

  スーツケースを転がしながら地元の小さな店で登山用の非常食を買いそろえ、その夜泊まった民宿では、トビウオの空揚げが出た。あっさりして食べやすく、お刺身でもおいしい。キビナゴやカンパチやミズイカもコリコリと、美味!

  翌朝4時に起き、バスに乗って登山口を目指した。いったん、屋久杉自然館というところに集められ、そこで持参した弁当、朝ごはんを食べ、55人ずつ大型バスでさらに山道を揺られていくのだが、そこに集まった顔ぶれを見て絶句。どう見てもどう見なくても平均20歳!と言い切れる、春休みの学生ばかりなのである。225人登ったというこの日、オジサン、オバサン、は、わたしを入れてわずか3人ほどだった。

  登れるんだろうか。縄文杉まで本当に行けるのか。往復10時間、22`といわれるその行程を踏破する自信がなく、不安いっぱいの登り始め。薄明るくなったちょうど6時半に、トロッコの軌道に踏み出した。

  不規則な枕木を踏みながら、単調な歩みを2時間。いい加減くたびれてきたところで軌道を離れ、急な勾配へ。一歩の段差が一挙に大きくなり、息が弾む。

  しかし、ここの空気のウマイこと!ウマイこと! マイナスイオンにあふれているとガイドブックに書かれていたが、まさに、吸い込むほどに、自分の身体の細胞のすみずみまでが生き生きと生き返っていくような。

  仁王杉やウイルソン株、夫婦杉など、特徴のある巨木を目指し、20分、30分と頑張って登って小さな達成感を積み上げてゆく。傾斜がきつくてもそれほど苦にならないのは、この達成感と、やはり、まるで映画のセットのような、ちょっと信じ難い、夢のようなロケーションのせいだろう。木々は大きくうねり、折れたりくっついたりしながら再生を繰り返し、そこにコケがむして、森はまさに緑。どこもかしこも、森は緑。

  スギ花粉が飛んでいるのか、あちこちでくしゃみが聞こえるのがおかしかった。

  愛らしいシカが寄ってくるので最初その物おじしない人懐っこさに驚いたが、彼らの目的は弁当である。カメラを向けても素っ気ない顔をしていたくせに、弁当を広げた途端、その鼻先をぬーっと近づけてきた。

  緑を縫って登ること4時間半で縄文杉に到着。その辺りには雪があり、レンタル装備の人々にはアイゼンが持たされていた。なくても、岩手の雪道で鍛えた歩きで見事にクリア。ついに着いた縄文杉の前で写真を撮ろうとしたら、そこに人がいるではないか!(縄文杉は保護のため柵で囲まれていて、通常近づくことができない)。聞けば、それは樹医さんだったようで、数日前に傷付けられた縄文杉の手当て、消毒をしているところだという話だった。
(盛岡市、書家)


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