盛岡タイムス Web News 2015年  1月 15日 (木)

       

■  出版界で「地方消滅」論争 増田氏(日本創成会議座長)に山下氏(首都大東京准教授)反論


     
  増田氏編著「地方消滅」と、山下氏著「地方消滅の罠」  
 
増田氏編著「地方消滅」と、山下氏著「地方消滅の罠」
 

 元知事の増田寛也氏編著「地方消滅」(中公新書)に対して、首都大東京准教授の山下祐介氏が「地方消滅の罠」(ちくま新書)を著し、出版界に人口論争が起こっている。国内の若年女性人口予測などから、全国896自治体の消滅可能性を唱えた増田氏に対して、山下氏は「増田レポートと人口減少社会の正体」の副題で反論を著し、社会学者として人口減少に別の処方を示している。増田氏に対しては「ナショナリズム」の警句をもって、人口論を踏み越えた批判も加えており、多方面に波紋を広げそうだ。

  「地方消滅」は、増田氏が日本創成会議座長として、人口減少問題検討分科会の学識の検討から、全国自治体の人口減少率をはじき出した。昨夏の刊行からホットな論点となり、版を重ねている。「日本は2008年をピークに人口減少に転じ、これから本格的な人口減少社会に突入する。このまま何も手を打たなければ、2010年に1億2806万人であった日本の総人口は、2050年には9708万人となり、今世紀末の2100年には4959万人と、わずか100年足らずで現在の40%、明治時代の水準まで急減すると推計されている」と、少子高齢化社会の行く末に警鐘を鳴らした。

  若年女性人口の減少が5割を超える896自治体に消滅の恐れを指摘。中でも2040年に人口1万人未満の523自治体に、その可能性を高く見積もる。一方、東京圏は高齢者の増加によるいびつな一極集中を懸念する。解決策として地方都市の人口集積、出生率向上の制度構築などを唱える。

  昨年末、「地方消滅の罠」を刊行した山下氏は、「その警鐘にこそ、地方を消滅へと導く罠(わな)が潜んでいる」との論旨で増田氏にかみつく。「地方を守るといっても人口20万人以上の中核都市に資本投下し、ここに人口を集めて『人口ダム』とするというのであるから、結局、東京一極集中から地方を守るために地方に準東京をつくって人口を維持しようという戦略にほかならない」と疑問を呈し、増田流の「選択と集中」の発想を危ぶむ。

  「一般に農村・地方の方が出生率は高く、大都市、首都圏で低いという事実を認めるのなら、人口を集めるべきは地方中核都市ではないはずだ。地方中核都市からさらに地方の中小都市へ、そしてさらには農山漁村へと押し戻すことが本来あるべき方策」と批判する。

  人口減への方針としては「多様性の共生」を唱え、「選択と集中は画一性への依存をもたらす。そしてこの画一性への依存が現実となったとき、それは国民の自立が損なわれ、主体性が喪失し、国家が何か別のものへと変質するときである」と持論を展開し、増田氏の立論を現代流ナショナリズムと解釈する。

  2冊を新書版で読み比べるよう、コーナーを設けた書店もある。


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