盛岡タイムス Web News 2015年  9月 12日 (土)

       

■ 〈体感思観〉言い残された「生活記録」 山下浩平

 



 矢巾町で悲惨な事件が発生してから、2カ月が過ぎた。いじめを防止するために作られたはずの方針が守られず、やるべきことをやらずに放置され、最悪の事態を招いた。いじめ基本方針の実効性の見直しやいじめ認知件数の再調査など、一つの小さな町で起こった出来事は県、全国に影響を与えている。学校と町教委に重大な過失があったことは、その通りだが、取材を通して感じたのは教育現場における判断の難しさである。

  問題があった学校で使われていた、生徒が一日の出来事や気になったことを書き記す「生活記録ノート」。担任教諭との2者間でやり取りするこのノートには、多感な中学生の日々の思いがつづられ、時には親にも話せないことを書き記す生徒もいるようだ。

  提出されたノートは、担任教諭がコメントを添えて生徒に返却。このやり取りやノートの記述を受けての直接の話し合いや面談を通して、教師と生徒との信頼関係が築かれている。信頼している担任教諭のみが見るノートと分かっているから、生徒は日頃の悩みを打ち明け、困ったことがあった場合には助けを求められるのではないか。

  今回の問題では、男子生徒のノートには何度も助けを求める記述があるほか、担任教諭を慕う内容も頻繁に記されている。把握している情報を見る限りでは、担任は男子生徒から信頼を得ているように見えるが、それでも最後は手を差し伸べられなかった。今後の対策として、仮にノートの内容について教員間で情報共有を図るなら、生徒はSOSを発する機会すら失う可能性もある。

  生きてきた時代も違い、大人同士の関係とも全く違う、教師と生徒との人間関係の構築。教師は担当教科を教えることに加え、担任を務める学級や部活で子どもたちと信頼関係を築く必要がある。今回の問題を受けた再発防止策を立てるとしても、細心の注意を払わなければ、いじめの認知すら困難な状況に陥るかもしれない。


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