盛岡タイムス Web News 2016年  2月 10日 (水)

       

■  高齢者守るソフト対策 土砂災害の防止軽減へ 県事業で成果報告 岩大農学部研究室が提言


     
  成果報告会で提言する井良沢教授(左)と笠原さん  
  成果報告会で提言する井良沢教授(左)と笠原さん
 

 岩手大農学部共生環境課程・砂防学研究室の井良沢道也教授と同課程4年の笠原智子さん(22)は、高齢者ら要配慮者利用施設等における土砂災害の防止軽減のソフト対策について県へ提言した。県の2015年度県民協働型評価推進事業に採択され、取り組まれた。全国で土砂災害による同施設等の被害が起きているのを踏まえ、避難の判断基準や避難計画策定、訓練に関する行政情報を的確に届けるよう提言。県はこれを踏まえ、周知徹底等を図る。

  提言は▽施設管理者が避難を判断しやすい情報提供▽砂防施設や土砂災害危険区域に指定された斜面の定期点検に関する情報提供▽福祉関係部局と砂防関係部局、県と市町村との連携―について充実を図るよう求めた。

  それによると、15年8月現在、土砂災害危険地域に立地する要配慮者利用施設は全国約2万カ所あり、うち危険区域指定を受けているのは約70%。県内は455カ所あり、区域指定は217施設で、指定率約48%と5割を切っている。

  盛岡市内も急傾斜地に接した要配慮者利用施設がある。笠原さんは中山間地だけでなく全県的な課題としてとらえる必要性を説く。県内施設の調査や先進事例の研究を通じて、高齢者を守る警戒避難体制の方策について、取りまとめた。

  土砂災害区域に指定された施設に対策を尋ねた結果、行政と合同の避難訓練、土砂災害の想定、独自の避難計画策定が未整備の施設が多く、指定後も対策が進んでいなかった。火災と比べて行政側のフォローや対策の不足が特徴で、避難基準や具体的な対策が現場に浸透していない実態が浮き彫りになった。

  県はこれを踏まえ、16年度以降、「いわてモバイルメール」や県土砂災害警戒情報システム、大雨時に配信する情報等について周知を図る。斜面の点検結果について異常の有無にかかわらず施設管理者へ確実に伝達する。

  福祉関係部局主催の会議等で土砂災害に関する説明の機会を設け、行政間や部局間の連携も深める。既に5日に盛岡地区で開かれた災害福祉地域研修会でテーマの一つにした。社会福祉施設の監査調書・自主点検表を改正し、チェック項目に土砂災害対策も追加。施設管理者の意識醸成や訓練の取り組みを促す考え。

  笠原さんは「県の施策でも情報を浸透させる難しさがもどかしいところがある。施設は利用者の命を預かる立場で防災意識が高い」と述べ、避難警戒体制の充実に期待した。

  井良沢教授は「施設では災害が起きれば、利用者のことでかかり切りになる。大規模な施設に防災担当者はいるが、ケアホーム等の小規模施設はスタッフが1人何役もこなしていて重要な課題。福祉と砂防の連携は今まで縦割りが多かった。社会福祉協議会が施設とつなぐ役割ができる」と指摘する

  9日に盛岡市内で開かれた、同事業成果報告会で発表された。


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