盛岡タイムス Web News 2016年  8月 6日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 藤澤則子 山と人の出会いに感謝



 国民の祝日「山の日」(8月11日)が今年から施行される。山の楽しみ方はたくさんあるが、7月31日に92歳で亡くなった山口九郎さん(前県遺族連合会会長、盛岡市)の一行と登拝した出羽三山が忘れられない。

  神官の故山口さんが50回目(50年目)の出羽三山登拝に臨んだのは、2000年8月。当時76歳だった。山岳修験の山として信仰を集めてきた山形県の羽黒山、月山、湯殿山の2泊3日の三山登拝に同行した。

  本県から32人が参加。年配者もいて、一行に交じった記者は「体力的に、皆さんより遅れることはないだろう」と甘くみていた。

  しかし、その考えは浅かった。1日目に羽黒山の出羽三山神社(三神合祭殿)を参拝し、翌日は出羽三山の最高峰、月読命(つきよみのみこと)が祭られている月山神社を目指した。月山登拝は三山参りのクライマックス。日本神話の世界を全身に感じるような天空の本殿を参拝し、記者の気持ちも高まった。

  ところが湯殿山に向かう下山の途中、記者の体力と気力は急降下した。慣れない早朝3時起きで食事が取れず、カメラを抱えて動き回ったせいか、頭はガンガン、足元はフラフラ。ついには胸のむかつきを抑えるのに必死になっていた。

  同行者に心配されても、無理矢理に顔の筋肉を動かして笑顔を作っていたが、おそらく顔面蒼白(そうはく)だったろう。

  それに対して、故山口さんをはじめとする登拝者の人たちは、歩みが遅れることも、先走ってペースを乱すこともなかった。登りがきつければ先立ちが「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と唱える。それに続いて皆が唱え、疲れを吹き飛ばして歩を進める。また年配者に声を掛けたり、着衣の乱れを直してあげたりと、互いに気遣う姿があった。

  故山口さんは50回登拝について、「健康でなければできないし、それが許される環境があったから」と感慨深く語っていた。

  「山の日」の施行で、今年はまだまだ登山シーズンは続きそうだ。体力づくり、自然との触れ合いなど登山の良さはたくさんあるが、健康で登山ができること、人との出会いに感謝し、山の懐の深さを感じたい。

 


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