本県で46年ぶりに開催される第71回国体「希望郷いわて国体」が1日、いよいよ開幕する。スポーツ担当として時に喜び、時に自信をなくしながら数多くの国体関連行事・事業の取材を重ねてきた。記者個人としても、これまでの集大成として国体に臨みたい。
いわて国体を語る上で欠かせないのは、2011年3月11日。記者としてだけでなく、一人の人間として忘れられない日だ。東日本大震災津波の影響で、県内のスポーツは大きな影響を受けた。国体そのものの開催も危ぶまれた。被災した沿岸地域では、スポーツや部活動どころではない状態。発生から時間がたった後も学校の校庭に仮設住宅が立ち並び、部活動のために長時間の移動を余儀なくされる児童・生徒もいた。
一方で、明るい話題もあった。同年のサッカー女子ワールドカップでは滝沢市出身の岩清水梓選手ら日本代表「なでしこジャパン」が決勝でアメリカを下して優勝し、日本中を沸かせた。高校野球では県勢が次々に甲子園で勝利を重ねた。県内にもプロチームが生まれ、バスケットでは岩手ビッグブルズ、サッカーではグルージャ盛岡が全国のチームを相手に奮闘している。
スポーツ関連の取材をする中で「スポーツの力」という言葉をよく耳にする。担当者としては失格かもしれないが、この言葉が全ての人に無条件で受け入れられるとは思っていない。国体よりも震災や台風10号への対応が先だ、と言われれば返す言葉もない。
それでも、スポーツの力の存在は信じたい。被災直後に取材に入った大槌町では、避難所となっている高校の片隅でサッカーを楽しむ子どもたちの姿を見た。体を動かしている間は他のことを考えず、無心になれるのだろう。仮に自ら身体を動かさなくても、数多くの困難や理不尽を乗り越えて栄冠を目指す選手たちの姿は、多くの人に勇気や希望を与えてくれると信じている。
いわて国体の総合閉会式の開かれる11日で、東日本大震災から5年と7カ月になる。「岩手で開催できてよかった」だけでなく、「岩手開催でよかった」と言ってもらえるよう、改めていわて国体の成功を願う。
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