盛岡タイムス Web News 2016年  11月  26日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 飯森歩 小規模農家支援の物流


 
 小規模農家などの生産物を盛岡市内中心部の小売店・飲食店に届ける「地域物流システム」が10月、県盛岡広域振興局の事業として始動した。盛岡近郊8市町で少量生産された野菜や果物を、配送機能を持つ事業者が市内に運ぶサービス。数個でも運搬可能。運搬する業者は配送機能があれば業種は問わず、業務の「ついでに」産地に立ち寄り、生産物を引き取る。運搬コストを抑え、地元食材の提供先を広げる狙いだ。

  大手流通業者を利用せず産直か地元スーパーだけを販売先とするいわゆる小さな農家にとって、流通にかかる作業は大きな負担となる。販売用に作物の土や汚れをきれいに取り除き、パックに小分けし、ラベルを貼り、値付けをして自家用車で販売先のスーパーまで運ぶ。ラベルもパックも自分らで用意しなければならない。高齢化が進み、家族経営など人手が限られる農家では、運搬だけでも骨が折れる作業だ。

  しかもここ数年、スーパーの産地直送コーナーでの価格競争が過熱しており、労力や運搬コストに見合う対価が得られない農家もあるという。

  価格競争を避けて近場の産直に卸せば、中心地の消費者には行き渡らず、生産のこだわりや特徴で差別化を図ろうとしても、今度は品質保証の表記の壁が立ちふさがる。「無農薬」と記載するには現地調査や細かい審査が必要なため、それが負担で無農薬をうたわず販売する農家もある。

  「食べてもらえれば違いが分かるから」という生産者の言葉に、何ともいえぬ歯がゆさを感じる。手間をかけて育てた良質な作物が、「手間」をかけられない状況によって流通を阻まれる。残念で仕方ない。ただ、重労働な農作業に加えて家事や子育てに朝から晩まで追われている姿を見ると、それ以上の負担を課すのは酷だと分かる。

  農家の採算を上げる策として農家が加工、販売まで行う6次化が推進されている。小規模農家にとっての6次化のネックは流通にあると考える。地域物流システムは、それらの負担を減らし地産地消を広げる後押しになると期待している。協力事業者が増えて配送ルートが広がれば、小規模農家の生産物や加工品の流通が促され、生産者の採算につながるだろう。


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