盛岡タイムス Web News 2017年  1月  28日 (土)

       

■ 〈体感思観〉編集局 馬場恵 福祉の現場から発信を


 
 県内で介護や福祉に携わる人材不足が言われて久しい。きつい業務に比して低い給料が原因と言われる。それも大きな理由に違いないが、仕事本来のやりがいや素晴らしさが、世に知られていないことも原因だと思えてならない。

  盛岡市内で24日に開かれた岩手県社会福祉事業団主催の支援検討発表会を取材した。同事業団の障害者福祉施設などで働く職員たちで作る四つの支援検討部会が、障害特性に応じた支援の工夫や、あるべき支援の姿を実現するための課題を発表する。県内に散らばる職員たちが発表内容を共有することで、支援スキルの向上と連携を図る取り組みだ。記者自身も大いに学ぶ機会となった。

  ▽発達障害のある児童が理解しやすいよう絵や図を使い、暮らしのルールを視覚的に伝える工夫▽窃盗や放火を重ねた初老の知的障害者の自立力を養う取り組み▽水を飲むことに強いこだわりのある入所者の気持ちを落ち着かせる環境や食事の配慮など苦労の跡が分かる発表が続く。社会的弱者と言われる人たちに心底、寄り添う気持ちがなければ、とても、ここまでできない。頭が下がると同時に尊い仕事だと感じた。

  助言者として招かれた青森県のNPO法人夢ディレクター・前田淳裕さんの言葉が印象的だった。「僕たちの仕事は、利用者さんの人生に直接、触れられる仕事。深めることで、普通では手に入れられない大きなものを手に入れているのではないか」。

  利用者の笑顔、互いの心が通じ合ったときの喜び、達成感、人間としての成長…。「大きなもの」の中身を私は想像でしか感じられない。これを現場で働く人に、多くの場で語ってほしいと思う。きれい事だけで済む話ではないだろう。それでも「大変」、「きつい」で終わらない仕事の魅力が伝わるはずだ。

  相模原市の津久井やまゆり園で発生した障害者の殺傷事件は社会に大きな衝撃を与えた。「共に生きる社会」のもろさを突きつける事件だとも言われる。福祉の現場から発信し、語り合うことは、一人ひとりの命の尊厳を大切にする社会を築き直すことにもつながるのではないか。


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