2017年 6月の天窓


 2017年  6月  30日 ― 安倍政権と加計の癒着 ―
 12年衆院選で初当選し現在2期目の自民党若手議員に不祥事が続く
▼不倫疑惑で議員辞職、金銭問題で離党、失言で謝罪、昨年豪雨被災地の岩泉町視察で長靴を忘れ、政府職員におんぶして視察。今春に「あれで長靴業界ももうかった」と発言し政務官を辞任等々。そこで収まらず今度は金切り声で絶叫し、年長の男性秘書をののしり殴る蹴るの暴行も加えた女性議員のご乱心だ
▼男性は耐えられず声を録音しけがは診断書を取り辞職。公開したのである。もちろん努力勉励し国民に尽くす若手議員も少なくない。だが政権党にうごめく後進の醜態は何を意味するのか。政権自体の腐敗の象徴なのか
▼国が進めた獣医学科新設大学選択は安倍総理のお友達が経営する加計学園に決まった。総理は関与を全否定するが国民は疑念の目を向ける。内閣は当初の選択条件を狭め加計1校に絞る方向へ改変。他校を排除する形で決着させた
▼内閣でそれを主導した萩生田官房副長官は、09年衆院選落選時には加計経営の大学で客員教授となり、同じく進めた木曽官房参与は昨春から同大学長を務めている。加計から何度も陳情を受けた下村博文元文科相が加計から献金を受けた疑惑も浮上している
▼癒着は濃厚である。総理がどう釈明しようとも国民は真相を察知して不信を募らせていく。

 2017年  6月  29日 ― 折り返し後の大切さ ―
 今年もあすで一年の半分になる。過ぎてみれば月日のたつのは早い
▼岩手の折り返しは7月1日の岩手山山開き。県内の他の山ではなく、岩手の秀峰の山開きに夏山登山の到来を感じる。山開き行事は滝沢、八幡平、雫石の3市町で行われ、各ルートから山頂で集結しピッケル交換をするのが習わし。今年は4年ぶりに山頂からお鉢にかけ登山者でウエーブをしながら万歳三唱する計画。土曜日のため登山客が多そうだが、恵まれた天候を祈りたい
▼残念ながら今年も山の遭難などが絶えない。痛ましい事故の報に触れるたび、山の怖さを再認識させられる。用心や注意で防げた事故や遭難も少なくない。登山を安全に楽しむ心掛けは怠ってほしくない
▼「夏山に帰路の体力残し置く」(稲畑汀子)。自分の経験や体力、脚力に見合った登山が大切なことは言うまでもない。日によって体調は異なり、山を熟知するベテランでさえ慎重なはず。経験の浅い人は下山の体力確保に留意してもしすぎることはない。登山間隔の開いた人は以前の経験を過信しがちだが、若い人以外は特に体力が下り坂にあると謙虚になることも必要でなかろうか
▼振り返れば今年前半は力を発揮できなかったと心当たりのある方もいらっしゃるに違いない。登山と違い、こちらは後半に巻き返したい。

 2017年  6月  28日 ― 葉を白く化粧する花 ―
 先日、家人が出身女子高の同窓会に参加。仲良しでずっと交流が続く友からもらったという珍しい花を持ち帰った
▼それは50aほどの茎の節々に葉が互い違いに付き、茎の先端には野草の虎の尾に似た花が咲いている。珍しいと思ったのは花の下にある数枚の葉の表面が、本来は緑色なのにその半面ほどが白色になっていることだ
▼この花は咲く時期が季節呼称の半夏生(はんげしょう=今年は7月2日〜6日)の頃とされることから「ハンゲショウ」と呼ぶ。また葉の半面が化粧でもしたかのように白色化することで「半化粧」という呼び名も生まれている
▼少々ややこしくなるが「半夏生」には別の意味もある。本来この表現は先の花とは無関係で「烏柄杓(カラスビシャク)」という中国伝来の薬草に由来する。「半夏」はこの薬草の元来の名前で「半夏=カラスビシャクが生える時期」の意味で「半夏生」と表現されたという。気候語の半夏生にはそんな背景もある
▼この花を自宅庭で栽培する先の親友は俳句もたしなむ。今年は例年より早く葉が白色化したことを「半夏生その日を待たず化粧する」と詠んでいる
▼このハンゲショウの花言葉は「内に秘めた情熱(内なる気)」だ。将棋界のある先輩がこの言葉を、偉業を達成した中学生棋士・藤井聡太四段に贈っていた。

 2017年  6月  27日 ― 礼を尽くしてふるさと納税 ―
 総務省がふるさと納税の返礼品について寄付額の3割以下に抑えるよう、地方におふれを出した。これに対して山形県の吉村美栄子知事が異を唱え、話題になった。
▼ふるさと納税は大都会の住民が郷里の発展を願ったり、思い入れのある地域や、応援したい自治体に寄付するという側面がある。まさに地方創生の趣旨で始まった制度だ。それを返礼品が派手すぎるの射幸心をあおるの、小さな一穴から財政規律が緩まないかなどと勘ぐっているなら、きっと霞ケ関の取り越し苦労だろう。
▼たまに他県に行けば、リサイクル店に入ってみる。古道具の品ぞろえや価格から、その街の市場の新品の質と量が見えてくる。見えっ張りとか、けちだとか、土地の人情も感じられて面白い。何をもって心づくしの品かというのは、各地の気質や風土によっていささか異なる。
▼ふるさと納税の課税基準は、「愛郷心」という数値化できないもの。返礼品の選択には直間比率ならぬ「食感比率」や「触感比率」があっていい。まさに、ぜいを尽くすようなことをしなければよろしいではないか。
▼国に従い盛岡市も返礼品は見直す方針のようだが、品目を見ればとても良いものばかり。引き続き地場産業の励みになるようリストアップしてほしい。「ふるさとノー税」にならぬように。

 2017年  6月  26日 ― 王貞治氏の練習と真剣 ―
 何事でも本番に備える練習の姿勢で問われるのは、真剣さであろう。「真剣」とは木刀や竹刀(しない)でなく、本物の刀剣を意味する
▼プロ野球の打撃練習でこの視点を取り入れたのは、巨人の黄金期を築いた荒川博打撃コーチだ。後に世界のホームラン王となる王貞治氏をはじめ往時の打者は皆、天井からつるした短冊状の新聞紙を的にして、本物の日本刀で球の中心部を切り裂く訓練をしたのだ
▼初心者はその新聞紙の短冊を刀の刃でなく腹(横面)で、跳ね上げてしまうという。このレベルだと打撃では空振りや凡打に終わる。それが練達者になると短冊は制止したまま刃で切断でき、打撃では本塁打など長打が目立つようになったというのだ
▼この訓練で球心を音もなく切り抜くように、短冊を切断した名手として注目されたのが王選手だ。荒川コーチの助言で始めた一本足打法も開花。本塁打量産の陰で猛練習も続行する。剣道家に弟子入りし改めて日本刀素振りの指導も受けている
▼その練習、鍛錬の真剣さの結晶が公式戦通算本塁打868本の大記録である。そこにはメジャーリーグの選手が保持していた、通算本塁打755本の世界記録を更新した輝かしい偉業も光を放っている。王氏の「真剣な練習」とその成果は球界を超えて多くの後進を勇気づけている。

 2017年  6月  25日 ― 森と水、里山を守る ―
 限界集落という響きからは危機感が伝わってくる。この限界集落を「水源の里」と命名し過疎や高齢化に直面する地域の再生を図ろうと条例を制定し取り組んでいるのが京都・綾部市だ
▼先ごろ訪ねた折にペットボトル入りの水「水源の里」をごちそうになった。水源の里の一つ、市中心部から車で1時間ほどの今は高齢者わずか4人が暮らす古屋の地下水を採水した。ラベルの「上流は下流を思い、下流は上流に感謝する。」との取り組みの合言葉に目が行く。すがすがしい言葉で水のうまさが増す
▼多くの地域で水に恵まれる日本だが良質な水資源を守る努力は東北にも。宮城県気仙沼市では気仙沼湾の環境汚染に危機感を抱いたカキ養殖家を中心とした「森は海の恋人」と詩情あふれる掛け声による湾へ注ぐ川の上流の森を守る活動が全国的に知られる。多くの人が健全な森の大切さに気付かされた
▼盛岡も水に恵まれている土地といっていい。盛岡市が水道水源の水質保全を目的に水源涵(かん)養林保全事業を創設したのは桑島博市長時代の97年。翌年から中津川流域の森を計画立てて取得。創設から今年で20年になるが、取得は265fになったという
▼水源の里も森は海の恋人も良い響きだが、里山や森の隣人として何ができるか、それぞれに考えていきたい。

 2017年  6月  24日 ― 中学生棋士が28連勝 ―
 コンピューターに人の知能に似た情報を記憶させ、それを活用するAI(人工知能)の技術は日進月歩だ。将棋の試合にも進出する
▼例えば昨年5月には滋賀の延暦寺を会場に、将棋の駒を進める種々の手法を記憶させた「将棋ソフト」と、プロ棋士である山崎隆之八段が対決している。それは完成度の高い人工知能と、修行で指し手を練り上げた人間棋士との勝負なのだが、「負けました」と敗北を認めたのは山崎八段だった
▼ソフト開発の専門家は将棋ソフトの精度は年を追って高まり、現在では勝率9割は珍しくないと言う。こんなAI時代だけに14歳の藤井聡太四段が3日前に、澤田真吾六段を退け神谷広志八段に並ぶ28連勝を、30年ぶりに達成した快挙がことのほか感慨深い
▼藤井四段は将棋ソフトの勝率を高める攻め手も研究。応用し勝利の要因にしているという。増田康宏四段と戦う明後日の試合は、新記録が懸かるだけに注目したい。彼は童顔は残るがあの落ち着きと老成を思わせる言葉には感心する
▼11連勝の時には「望外の結果」と喜び20連勝時には、「僥倖(ぎょうこう)としか言いようがない」と発言して大人をうならせた。扇子に自筆でしたためた「大志」には決意がにじむ。僥倖(思いがけない幸せ)を重ね、棋界の王将へと歩んで行くことだろう。
  

 2017年  6月  23日 ― 横田節を偲んで ―
 元県議の横田綾二さんが亡くなった。昔、右も左も分からぬ県議会にいきなり行かされ、共産党の横田さんと、自民党の佐藤正春さんのやじりあいに度肝を抜かれた。
▼「日本共産党の横田綾二でございます」と登壇すれば、大向こうの佐藤さんが「自民党さ来ぉ!」とヤジ。横田さんジロリと「あなたこそおらほに」とやりかえす。こんな調子。きょとんと見ているしかなかった。
▼盛岡選出で南部男の「横田節」と、一関選出で仙台衆の「正春節」。おのおの党の建前はあったが、本音は通い合っていた。丁々発止で議事に緩急を与える、いわば毒舌のスポーツマンシップがあった。
▼1995年春で6期の任期を終え、横田さんが議場を去る日が来た。二人の間に何が起きるか。「きょうでいなぐなるのが。寂しいなあ」と駆け寄る佐藤さん。二人は肩を組み、ノーサイドで議場を後にした。与野党の戦友は旧友に。ロビーには次の「小沢時代」の靴音が響いていた。
▼共産党だけに孤軍奮闘。不敵で、知的で、素敵な笑顔を見せる人だった。山車をこよなく愛する、いなせな祭り男。句をひねり、柳号「岳猿」。野人の気概も忘れぬ意地があったのだろう。89歳で天寿を全うし、来世の楽園に旅立った。故人に一句、「党派超え、酌(く)み交わす人、事欠くめえ」。

 2017年  6月  22日 ― 美味で良質な房州ビワ ―
 今年は空梅雨の地域もあるようだが、ビワ(枇杷)の果実はこの時節が旬である。俳人の宮津昭彦さんは「枇杷食べつ見てをり窓の外の雨」(「濱」所収)と詠む。この季節らしく雨降る外を眺めながら旬を味わっていたのだろう
▼わが家には3日前に全国有数の産地である千葉県南房総の旧友から、今年も「房州ビワ」が届いた。20年ほど前にこちらが岩手りんごを送って以来、贈り合いが続き今に至っている。皇室献上の伝統のある房州ビワはとにかくおいしい
▼みずみずしい果汁の淡い甘さが口中に広がり、外が雨でも晴れでもこの梅雨時期の美味は混迷政局などもしばし忘れさせてくれる。それに房州ビワはほかの品種よりサイズも丸い膨らみも大きい。澄んだ空気と豊かな水源、温暖な気温、適度な海風。それらが良質のビワを育てる
▼栽培農家は無農薬の自然栽培に徹し手作業で大胆に摘果・摘花も行う。残した本命の果実には袋をかぶせて、きれいな状態で出荷するという。ビワの育成には相性のいい南房総の自然環境に農家のきめ細かな判断と手作業が加わり、自慢の「房州ビワ」が毎年レベルを維持しているのだ
▼なお、ビワの葉は古い時代から薬効が注目され、現代でもそれが立証されていることから注文が多く、南房総でも果実と共に発送をしているという。

 2017年  6月  21日 ― 中間報告は審議未了の裏返し―
 通常国会は会期延長なく18日に閉会した。年度予算が最大の重要案件となるのが例年の常だが、今年は予算成立後の生前退位法案、組織的犯罪処罰法改正案が特に注目を集める重要法案となった
▼通り名「共謀罪」で浸透した組織的犯罪処罰法改正案が会期末ぎりぎりに可決成立した。すでに成立、施行されていたらと考えてみた。ジョークなのだが、委員会審議を打ち切って採決を省略し本会議が中間報告を得て採決する特例を「共謀」した自民と公明の両党は捜査対象となり得るか。中間報告は認められている制度であり奇策と言われても行使に非はない。かといって安定多数の与党が乱発するようになってはならないだろう
▼多くの議会では常任委員会が設置され、議案を付託された委員会が審議し採決の上で本会議の採否に掛けられる。委員会審査が省略されるのは全員かそれに近い議員が一方に偏っている場合など。ところが中間報告は賛否の対立が鮮明で審議が滞っている場合に使われる。熟議が求められる国会とすれば、少なくとも前向きではない制度にとれる。民主的にも映らない
▼法案反対派の挙げる疑念に政府側は十分に答弁しきれなかった。今回の強行採決は民主主義を傷つける恐れがあるとして捜査対象となり得るか。想定問答書にはなかっただろうが。

 2017年  6月  20日 ― ドイツ統一の父逝く―
 ドイツは先の大戦で敗れ戦後処理で東西に分割統治された
▼1982年に西ドイツ首相に就任したコール氏は、関係諸国首脳とも対話交渉を重ね世論のうねりも起き、89年には東西境界を封鎖したベルリンの壁を崩壊させた。翌年には国民悲願の東西統一を実現。その後も98年まで合わせて16年余も首相を務めた
▼「ドイツ統一の父」と慕われた元首相が16日に87歳で波乱に富む生涯を閉じた。10年前にはインタビューで「(もしやり直せるなら)かつて私がやって来たことを再び同じようにやるだろう、とは私には言えない。なぜならその道は上り下りが激しく、時には誤りさえあったのだから」と語っている
▼敗戦国とはいえ数百万人ものユダヤ人を虐殺した狂気のナチス軍を擁したドイツである。欧米や旧ソ連などの首脳に東西統一案を語った時にも、平和主義の国是を心を込めて訴え、大国化への懸念を丁寧にほぐしたことであろう
▼元首相は冷戦当時から「平和志向のドイツ」を理念に欧州統合にも献身。米ブッシュ、仏ミッテラン、ソ連ゴルバチョフの各大統領はじめ主要国首脳らと会話を重ね、信頼関係を築いていたという
▼体重は最高機密と言い明かさないが巨漢だ。でも涙もろい。ミッテラン氏逝去の際は号泣したという。既に天国で笑顔で対面していよう。

 2017年  6月  19日 ― パチパチと写真供養 ―
 カメラのシャッター音を文字にすれば、「パシャパシャ」「カシャカシャ」「パチパチ」。どう書くかによって、擬音なりの被写体が思い浮かぶ。雨だれのような「パシャ」なら風景、「カシャ」なら機械や建物など人工物、「パチ」なら人々の拍手、といったところか。今はデジカメの音で全然違うかもしれないが。
▼6月1日の写真の日、盛岡市の櫻山神社で県写真材料商組合が初の供養祭を開いた。写真のプロには、デジタルよりフィルムの方が保存性は高いという人がいる。ネガにははっきり所有感があり、誰の手に渡っても、しっかり残ると。
▼音声も似たことが言える。昨年、ある自分史教室の講師に呼ばれたとき、親族の話を残すにはカセットが一番と力説した。ITで録音しても再生方法を忘れたり、機材やデータが壊れて替えがきかなくなればおしまい。カセットなら「おじいちゃんの声。何年何月何日」とラベルに書き、仏壇の引き出しにでもしまっておけば、代々伝わるだろう。
▼写真供養はこれから毎年の行事になる。先祖の遺影を焼き直した元の写真や、アルバムを整理してなど、奉納の思いはさまざまだが、自分たちの来歴と思い出を承け継ぐ良い機会になるのでは。
▼古い写真に一家の繁栄を願い、かしわ手パチパチとはらい清めてもらえばありがたい。

 2017年  6月  18日 ― 総理と加計の妙な呼吸 ―
 森友問題に次いで安倍総理との関係が不透明な加計学園が、耳目を集めている
▼岡山に本部を置く同園はこども園のほか3大学などを経営。加計孝太郎理事長について安倍総理は3年前に、同園の千葉科学大学の式典で「どんな時も心の奥でつながっている友人、私と加計さんもまさに腹心の友だ」と語っている。あうんの呼吸の仲なのか
▼同園は早くから四国今治市に自営大学の獣医学部新設を目指すが、同学部の京都方面設置を志願する大学との競合になる。ところがこれもあうんの呼吸か、政府は「全国的見地で検討」との当初方針を昨年11月に「獣医大の無い地域に限る」(一校のみ)と改定
▼「無い地域」は四国だけで加計の今治新設が確定し京都ははじかれる。総理は介入を否定するが「総理のご意向だ」などと記載された文書14点が確認され疑惑が深まる。双方が会わずに通じるなら神業だが総理も理事長も人間だ。やはり今治進出を練り上げる頃にも会い続けた
▼2人は14年6月から昨年末までに13回も会食などをしている。でも懸案も以心伝心で京都外しも呼吸の知恵なのか。願望実現の今治市も加計に対し大学獣医学部新設用地17f(36億7500万円相当)を無償で譲渡し、事業費名目で96億円を提供した
▼この度外れた厚遇も総理の無言の神業だろうか。
  

 2017年  6月  17日 ― 棄権が危険な時代 ―
 安倍総理の連載のため、太平洋戦争中の1942年総選挙について調べた。唯一の政党であった大政翼賛会への信任を問うよりなかったので、「翼賛選挙」と呼ばれる。大東亜会議と並び、東条政権下の茶番のように見られがちだが、現代に重要な示唆があった。
▼衆院選で83・1%という今ではありえぬ高投票率に驚いたが、さらに注目すべきは挙国一致の強権下でも、6人に1人は棄権していたこと。当時の翼賛会の選挙運動員なら、首に縄を付けてでも投票させることはできたろうに、それはしなかったのだ。
▼「東條内閣総理大臣機密記録」を見ると投票前日、東条は、「選挙を政府に有利に指導せんとする目的を以て政略的に警戒警報を発令するは却って逆効果を来す」などと、あまり締め付けないよう指示している。
▼非常の時局に棄権のおそれありといえば、何らかの理由でまだ兵役を免れていた東京大阪の盛り場の愚連隊とか、沈黙した反体制派というような人々ではなかろうか。彼らを無理やり投票に連れて行けば、翼賛会以外の無所属候補に入れるだろう、それは戦争遂行上まずいと考えたのか。東条は岩手人らしく生真面目ではあるが、軍閥抗争を勝ち抜いてきただけに、策士でもあった。
▼言うことが聞けんのかと国が言う時代、棄権はやっぱり危険だ。

 2017年  6月  16日 ― 高田松原と木を植えた人 ―
 大震災前の陸前高田松原には、約7万本の松の木が生い茂っていた。3・11巨大津波はそれをなぎ倒し、壊滅させてしまう
▼だが人々は試練を克服し「もう一度、木を植えよう」と立ち上がる。志の輪は県境も越えて広がっていく。植栽基盤となる盛土工事も進み植林は今春から可能となる。5月27日には初の植樹会を県主催で実施する
▼この日は達増県知事をはじめ県内外の市民ら約390人が参加。虫に強い抵抗性クロマツの苗木1250本を植えた。昨年10月に地震があった鳥取県から参加した小6の前田緯吹君が、「復興のお手伝いがしたくて来ました」と声を弾ませた姿が印象に残る
▼今月11日にはNPO法人「高田松原を守る会」など民間が主催した植樹会を開催する。この日も県内外からほぼ100人が参加。かさ上げ地およそ2400平方bに、抵抗性クロマツ苗木1200本を植えた
▼フランスの作家ジオノの短編「木を植えた男」(1953年発表)が浮かぶ。初老の男が森を夢見てナラなど木々の苗を荒れ地に植え続ける物語だ。長い空白の後に訪れた旧友は荒れ地が消え空を覆うような森の出現に驚嘆する。大地から水まで湧き出ていたのである
▼7万本の松原にも江戸時代に菅野杢之助の植林、松坂新右衛門の増林という木を植えた男がいたという。

 2017年  6月  15日 ― 近視眼的なパリ協定離脱表明 ―
 相場英雄さんの小説『震える牛』では「幾度となく、経済的な自由が、国民の健康上の自由に優先された」「極限にまで推し進められた自由市場主義は、おそろしく偏狭で、近視眼的で、破壊的だ」と、米国のエリック・シュローサー氏の「ファストフードと狂牛病」が引用される
▼最近合致したのがトランプ米大統領の地球温暖化防止の国際枠組みであるパリ協定からの離脱表明。国民を地球に置換すればなお分かりやすい。米国はブッシュ第43代大統領が京都議定書から離脱した前例がある
▼トランプ氏の表明にはまったく驚かないが、失望と批判が次々と上がったのは当然だ。温暖化はでっち上げとでっち上げても気候変動は自然要因と人為的要因に分けて考えるのが世界の常識。そのため最大の人為的要因である温室効果ガス排出量を抑制しようと合意したのがパリ協定
▼トランプ氏は排出国の現在1位である中国を持ち出し、2位の自国に不公平だという。強奪したのは8億円で、10億円の強奪より罪は軽いと主張するようなものではないか。排出大国として責任を免れ得ないはずだ。G7外相会合でも米国は離脱を通達。懐柔策で翻意できるならけっこうだが、いっそ協定各国が批准していない輸出国の排出量に応じ関税に環境税を上乗せし対策費に使うのはどうか。

 2017年  6月  14日 ― 「三角折り」是非論が炎上 ―
 かつて出張先の宿で小さな発見をしたことがある
▼一般家庭にも洋式トイレが普及し始めた頃で、そのホテルも洋式。そこに小さな工夫があった。それは今では珍しくないが便器脇に装着したトイレットペーパーの先端が、きれいに三角形に折られていたのだ。トイレは「ご不浄」とも呼ばれ不潔のイメージがある
▼それだけにペーパー三角折りの着想は新鮮で、清楚(せいそ)にすら見えたのだ。翌朝、清掃担当者に伝えると「そんな見方はうれしいですが実はあれは、この部屋の清掃が完了したことを従業員仲間に知らせる合図なんです」と笑顔で語ってくれた
▼そんな経緯もありわが家も早い時期から、ペーパー三角折りを続けている。もちろん「折る」という手作業の前には衛生上からも手をきれいに洗うことは欠かせない。ところで時の話題に反応し炎上しがちなネット上では今、この「三角折り」是非論が燃えている
▼手洗いの励行が確認できる家庭などへの酷評はなさそうだが、病院や事業所、レストランなど確認不可エリアには手厳しい。これら施設のトイレでは細菌感染に留意し、三角折りを廃止すべきという意見が火勢を増している。三角折りをしないようトイレに提示した病院もある
▼この時流を見詰めつつ自宅では来客のためにも三角折りは続けたい。

 2017年  6月  13日 ― 無告のテロの恐ろしさ ―
 きのう欧州、きょう中東と連日、陰惨なテロがある。国内でも、あちこち指名手配が張り出されていた中核派の男が潜伏46年で逮捕された。
▼中核派と言えば30年ほど前、盛岡市で大きなアジトが摘発され、市民に衝撃を与えた。先日は爆弾闘争のセクトで死刑囚の活動家が獄死した。往年の闘士とやらも古希に手が届き、孫かてでもしていればよいのに、人によってはまだ暗い情念を燃やしているのか。
▼全共闘世代のカリスマだった映画監督にインタビューしたとき、「大変な事件がありましたね」と聞くと、「いや、彼らは世界のため、社会を良くしようと一生懸命だった」とまくしたてられた。その気持ちも分からなくはないけれど。
▼昔、長いイタリア映画を見た。テロリズムに走る教え子に向かい恩師が、「君は学生時代から真面目すぎた。しかし真面目な人間は真面目に見えて、実は真面目ではないことがある」と、謎かけのようなせりふがあった。過激な理想に酔うより、ちゃらんぽらんで、ごく平凡な方が、人生の真実に向き合っているということだろう。
▼中核派は黙秘しているようだが、そんな無告の執念に今、何の意味がある。誰かが黙ってろと言うのか。イスラム国の無告のテロの方が、はるかに恐ろしい時代になった。あまりにむごく、許しがたい。

 2017年  6月  11日 ― 軽さ目立つ総理の言葉 ―
 軽い思い付きの吐露とも聞こえる言葉が目立つ安倍総理は、それだけでなく時にはわめくような声も響かせる
▼良家生まれでスタイルもいいから尊敬したいのだが、軽い言葉がそれを妨げてしまう。例えば国会でも民主党議員が昭恵夫人と森友学園の「ズブズブの関係」について問うた際に総理は逆襲する
▼《「ズブズブの関係」とかそういう品の悪い言葉を使うのはやめたほうがいい。それが民主党の支持率に出ている》と。昭恵夫人と森友の癒着ぶりを問いただしているのに、それに触れたくないのかまともに答えず、言葉尻に難癖を付け見当違いの支持率に結びつけている
▼総理発言をマークしている記者諸氏なら爆笑したであろう。総理は昨年4月の衆院北海道5区補欠選挙の際には、「民進党と共産党がこんなに《ズブズブの関係》になった選挙は初めて」と、品の悪い言葉を自ら使っている。信念でなく軽く言うとこうなるのだろう
▼総理はまた野党側にしばしば「野次はやめていただきたい」と呼び掛ける。ところがご本人がよく野次を飛ばしていることは皆さまご承知の通りである。おそらく自身の立ち位置は最高位で、指摘は許されるという自負からくる慢心であり勘違いなのだろう
▼国民が地位でなく言葉に表れる人格を見ていることに気付いていないらしい。

 2017年  6月  10日 ― きょうはチャグチャグ馬コ ―
 「岩手の人沈深牛の如し」とは彫刻家高村光太郎の詩「岩手の人」のフレーズ。光太郎は終戦の年の45年、東京の空襲に遭い現在の花巻市に疎開、郊外で7年間、独居生活を送った。達増知事がうし年09年の年頭訓示で「うし年は岩手の年です」と引用したのが記憶に残る
▼古来、農耕には牛馬が貴重な動力だった。田起こしなど田植え準備、重い物を運ぶことも多く、山中で切った木の搬出にも馬が使われた
▼塩の道に関わり盛岡には中津川の富士見橋付近に牛が橋を渡ることが許されなかったため川を横切った牛越場の跡が残る。沿岸から塩を積んできた牛たちだ。近くには牛方宿の一つだった建物が荒物雑貨屋の平野正太郎商店として今も健在。馬市のあった馬検場跡も知られる
▼旧糠部郡の戸の付く地名は馬を飼育した牧場に由来する。南部氏が名声を高めた馬産地の名残だ
▼民謡に目を向けると、南部馬方節に南部駒引唄、南部道中馬方節、外山節の歌詞にも駒が出てくる。牛なら南部牛追唄に南部牛方節。馬方衆や牛方衆が牛馬を引きながら牛馬とコミュニケーションを取った。愛情の表れである
▼きょう南部の愛馬精神を伝えるチャグチャグ馬コが滝沢から盛岡まで行進する。装束で着飾った姿と鈴の音を想像すると馬コの民謡が頭の中でリフレインする。
  

 2017年  6月  9日 ― 八重子のハミング ―
 夫は元小中学校の校長で妻も元音楽教師。その教育一筋の平穏な夫妻を病魔が襲う
▼夫は胃がんが見付かり手術は4度に及ぶ。彼は次第に克服していくが病名に衝撃を受けた妻は、記憶喪失など言動も異様になり医師はアルツハイマーだと告げる。以後、回復した夫による献身的な介護が続く
▼これは1990年代初頭を起点にした実話で、夫とは山口県在住の陽(みなみ)信孝さん(78)だ。妻の八重子さんは治療と介護に支えられ延命。02年末に65歳で永眠する。陽さんは介護の様子などを克明に記録。折々に短歌も添え「八重子のハミング」と題した回想記を小学館から出版している
▼そこには幼児に戻った病妻が甘える場面もある。「幼な子にかえりし妻のまなざしは想いで連れて我にそそげり」と。便通も夫が対応。「紙おむつ上げ下げをする度ごとに妻は怒りてわれをたたけり」「小尿を流しし床を拭くわれの後ろで歌う妻に涙す」とも詠む。八重子のハミングに哀れを感じたのだろう
▼夫は「よみの国求めていかば必ずやまみえることのあらば行きたし」と、あの世で妻と会いたいという情念もうたっている。「八重子のハミング」は映画化され全国上映も始まったので詳述は割愛したい
▼現時点で県内の上映予定は今月24日土曜日・一関シネプラザとなっている。

 2017年  6月  8日 ― サンシャイン60の影にて ―
 山手線西寄りに三つの大きな盛り場がある。上京するたび、新宿と渋谷は楽しそうでよく行ったが、池袋にはなぜか足が向かなかった。暗い怖い街のような気がして。近現代史の本を開けばよく見る「巣鴨プリズン」のイメージがあったからだろう。恐れて尻込み、「三舎を避くる」というやつだ。
▼巣鴨プリズン跡地の池袋東中央公園に、東京裁判で刑死したA級戦犯の慰霊碑があり、写真を撮りに訪ねた。昨年は渋谷の2・26事件慰霊塔に行ったら、なぜか若者のパワースポットになっていて驚いたが、さすがに巣鴨でそれはなかった。
▼2・26では斎藤實と高橋是清が陸軍皇道派のテロに倒れ、東京裁判では東条英機と板垣征四郎が連合国により断罪され、岩手に縁の指導者4人が、昭和史を血に染めた。
▼地域エコノミストの藻谷浩介氏が盛岡で講演し、「山口県出身です。戊辰の節はごめんなさい。でも昭和になってからは岩手県の方が…」と切り出したことがある。太平洋戦争前後の動乱は、岩手人の死に始まり、終わったと言っても過言ではない。
▼東条、板垣が処刑されたところは今、緑に囲まれ都民が憩う。池袋は明るい街で、もう三舎を避くることはないが、公園のそばに「サンシャイン60」が建つ。巣鴨プリズンでは、戦犯として60人が亡くなったそうである。

 2017年  6月  7日 ― GPS衛星明暗の話題 ―
 地上から約2万`の軌道を飛ぶ人工衛星の電波を受信。地上のどの地点でも緯度などを測定できる「全地球測位システム(GPS)」が話題を広げている
▼従来日本は米国のGPS衛星を借用していたが、今月1日に日本製GPS衛星「みちびき」の打ち上げに成功した朗報もある。年内にさらに2機を打ち上げ7年前から試験飛行中の1機と合わせ4機体制で来春実用化の予定だ
▼「みちびき」は米国衛星と同じくカーナビやスマホなどで位置情報も利用できる。4機は時をずらし1日当たり8時間程度、日本上空付近にとどまる特殊な軌道を飛行する。精度も上がり米国衛星の誤差は10bあったがこれが6aにまで圧縮する
▼一方、暗い話題もある。犯罪捜査への乱用問題だ。警視庁は自動車連続窃盗容疑者グループの車に、裁判所の令状なしでGPS端末を取り付け捜査。48歳の被告を逮捕し起訴する。東京地裁はGPS捜査は違法だという被告の訴えを認め先月30日に判決を下す
▼裁判長はGPS捜査は1年9カ月に及び、プライバシーを大きく侵害したとし、被告には一部無罪の懲役刑を言い渡す。警察には司法審査への軽視が見られ令状なきGPS捜査の違法程度は重大と指摘している
▼なお最高裁は今年3月に令状のない端末装着は違法との判断を初めて示している。

 2017年  6月  6日 ― 大崎タイムス70周年を祝って ―
 宮城県大崎市で発行する大崎タイムスが、6月で70周年を迎える。ニューヨークやイギリスはさておくとして、タイムスと名がつく新聞には、やっぱり親近感が湧く。歴史的に滝沢市の大崎とも縁のある土地柄のようだ。
▼三陸新報のある気仙沼市を含め、宮城県北は岩手県と行き来が盛んで、「来てけんさい」との県際交流があった。昔は在来線で小牛田あたりまで実に遠かったが、新幹線なら大崎市の古川駅まであっと言う間。県境をたやすく越えるあまり、仙台や東京の求心力の方が強い人は多いだろう。たまに途中下車してみれば、親しい風土があるのでは。
▼大崎タイムスのユニークなところは、韓国の舒川新聞社との姉妹交流。なかなか一筋縄でいかぬ国ではあるが、政府間に難しい問題があっても、地方同士の理解を深めることは隣国として大切だ。
▼地域紙は身近な話題に徹するのが身上。しかし、ただ狭いからに閉じこもれば良いものではない。取材側も読者も、さりげない話題の背景に日本や世界が見えたとき、面白みを感じるはず。国を超えた地域紙の結びつきもそこに意義がある。
▼大崎タイムスと読めば、「期待」と響くのがうらやましい。盛岡タイムスと読んであまり「堅い」と言われないよう、みちのくのローカル紙の先輩と、頑張りたいのす。

 2017年  6月  5日 ― 米大統領が地球温暖化抑制放棄 ―
 南極では温暖化の影響でせり出した巨大な棚氷の亀裂が、急速に広がっているという
▼世界中の事業所や家庭などから排出される二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスが気温を上げ、海水温も上昇させやがて南極の棚氷も溶かし海水面まで上昇させる。それは前世紀から警告されていたが現実になりつつある
▼南太平洋に浮かぶ人口1万人弱の島国・ツバルは、標高が高い所でもわずか5b。近年は海水面上昇で国そのものの水没も想定。ニュージーランドの協力で同国への全国民の段階的移住に着手している
▼かつてツバル国首相が《温暖化ガスを排出する先進諸国は、土地と共に消えてしまうかもしれない貧しい国のことを考えてください》(要旨)とメディアで語っていたことが忘れられない
▼もちろん国連は以前から世界へ温暖化対応を呼び掛けている。温室効果ガス抑制会議も会を重ね15年末にパリで開催した第21回締約国会議では「パリ協定」を採択。参加する196カ国地域が効果ガスの自主的削減目標を、5年ごとに国連に提出し達成を目指すことになる
▼ところがトランプ米大統領が先日、排出大国の責務を放棄し協定離脱を表明。削減達成は絶望となる。暴挙に米国民からも非難が噴出している。米首脳にはせめてツバル国の悲哀に応える度量がほしい。

 2017年  6月  4日 ― 獅子身中のテロ分子 ―
 盛岡出身のエッセイスト澤口たまみさんから、子どもは虫に興味を持ち好きになるが、親の虫嫌いに影響され好きじゃなくなるという話を聞いたことがある。無害な虫まで一網打尽だ
▼そんな心理が影響したのか、虫の文字からは不吉なことやマイナス作用の慣用句がすぐに思い浮かぶ。虫が好かない、虫ずが走る、虫の居所が悪いなど。虫の知らせといえば、良くないことを予感させありがたいはずとは虫のいい話か
▼慣用句ではなくても顔をしかめたくなるのは虫歯。きょうから歯と口の健康週間。日頃からケアしていたつもりでも、いつの間にか虫歯になった方は多いだろう。治療や検査から逃げて痛い目に遭ったことも一度だけではないが、自己責任で同情の余地はない。虫は体内の病気の種に例えられ、虫歯と直接的に使われた虫に同情すら覚える
▼獅子身中の虫は仏教経典「梵網経(ぼんもうきょう)」にある。飼い犬に手をかまれるどころではなく、獅子が体内にいる小さな虫に身を滅ぼされるの意から、仏教徒にもかかわらず仏教に害を与える者を指す
▼第2次世界大戦後、イスラム教と他教が敵対心を持って争いの火種になったのが中東。今日はイスラム教の獅子身中の虫が無差別テロを繰り返す。これではイスラム教自体を滅ぼしかねないとの見方も必要か。

 2017年  6月  3日 ― 心配な総理の公私混同 ―
 安倍総理は今年3月の党大会では、長期続投をにらみ総裁任期を「連続3期9年」に改定している
▼強引ともいえる安倍流さい配が続く。支持率は50%前後を維持はしているが、ちまたの反応は意外に厳しい。特に売却国有地を当初提示額から8億円も値下げした無謀さ。買い手・森友学園への昭恵夫人の深入りなども評判を落としている
▼続く加計学園騒動は一貫して総理自身が絡む。同園理事長は若い時からの親友で、全国紙の首相動静欄にも会食などでしばしば名前が登場する。総理自身が以前に加計の役員をしたこともある。だが総理に自戒はなく妙な人事も行う
▼16年9月まで2年半ほど内閣官房参与を務めた木曽功氏を、同年4月には官房参与のまま加計学園理事にしているのだ。公私混同の癒着は獣医大学新設問題でも起こる。当初は対象を「全国的見地」としていたが、昨年11月に政府は「獣医大の無い地域限定」と改変
▼これで京都などは断念。建設地は四国今治市となりここでもまた獣医大新設と経営を加計学園に託す。その上、国家戦略特区政策に乗り獣医大誘致を見通していた今治市は、建設用市有地17f(約37億円相当)を無償で加計に譲渡した
▼それにしても一国の総理が親友をここまで遇していいのだろうか。慢が高じては人心は離れよう。

 2017年  6月  2日 ― 山形から銭形の親分を ―
 八重嶋勲さんの連載「学友たちの手紙」が5月で終了した。野村胡堂の学生時代の書簡を通して明治の青春に光を当て、作家としてのルーツを探った。長年の執筆をねぎらいたい。
▼胡堂を記念する紫波町のあらえびす記念館で先頃、本県出身の作家、柚月裕子さんが講演した。「検事の本懐」など法曹界に材を取った傑作あり、日本推理作家協会賞をもらい、直木賞の期待高く、もう売れっ子だ。山形市在住なので、昨年は寒河江市出身の本紙記者がロングインタビューした。
▼胡堂も法曹と縁が深い。東大では法学を選んだ。性に合わず投げ出し、文学に入れ込んだが、決して無駄でなかった。
▼「銭形平次」を法律家が読むと、「これは近代法を学ばないと出てこない発想だ」と感づくらしい。たとえれば、ニューヨーク市警の刑事が、マンハッタンで十手を出すような錯覚を覚えることがあると。ただ、そんなに意地悪に読む人ばかりでない。逆にそこが推理小説のだいご味となっているから、何とかの功名だ。
▼釜石生まれ、子どもの頃、盛岡と紫波に住んだ柚月さんは、まさにあらえびすの後継者。作品は次々テレビドラマ化され、映画も封切られる。東北の文壇も華やごう。山形から、銭形の親分みたいな名探偵でも造形したら、決め手の「紅」が跳ぶ。

 2017年  6月  1日 ― 衣服を薄くする時節到来 ―
 歳時記の夏の項に「空蝉(うつセミ)」という季語がある。後述するがセミの抜け殻のことだ
▼多くのセミは樹上で誕生し幼虫はやがて木の根元から地下にもぐる。木の根に沿って穴を掘り樹液を吸って成長し数年間を地下で過ごす。脱皮を繰り返し皮下に成虫の体形を整えつつ地表に近づき、夏の気配など地上の様子をうかがう
▼幼虫は知覚が働くのか晴れた日の夕刻を選んで地上に現れ樹木を登り、一夜で幼虫から成虫への脱皮を行う。敵が出没する朝までには飛べるようにするためだという。脱皮劇のハイライトは幼虫が木の幹に爪を立てて背を割り皮を脱ぎ、抜け殻(空蝉)となってそこから白い成虫が顔を出す場面だ
▼翌朝までに飛翔用の羽も整いセミらしい体色もつく。ところで成虫誕生直前の「空蝉」を夏季を招く時節と位置づけ、そこに「衣替え」の意味を添え一首詠んだ歌人がいる。江戸後期の国学者・本居宣長の養子となり後継者となった本居大平である
▼歌人はうたう。「花の陰なれしも夢か空蝉の羽衣うすく夏は来にけり」(「稲葉集」所収)と。《桜花の陰に慣れ親しんだのも夢だったか。もう厚着を脱ぎセミの羽のように薄い衣服に替える夏だもの》という趣旨になる
▼平成の今もきょうを機に気温の推移も見ながら、衣服を薄くする時節の到来である。

2017年 5月の天窓へ