2017年10月の天窓


 2017年 10月  20日  ― 棄権の債務残高 ―
 盛岡でも選挙のたび都市部の低投票率を言われる。投票率がある程度の歩留まりに終わるのはやむを得ないが、やはり棄権はしない方がよい。選挙は民主主義の基本だとか建前はともかく、投票に行かないでいると背負い込む人生の負債について述べてみたい。
▼人はやはり世間と同じことをしておいた方が無難だ。「みんなが投票に行くから自分も」でいいのだ。これは有権者の人生に大きな意味を持つ。仮に80余歳の生涯として、投票権を得て60年以上の間に、国政地方合わせて選挙が何度あるか。おそらく70回前後だろう。
▼政治的関心は人により濃淡がある。無関心でいつも決まった党に入れて済ませる人、逆に政治に興味がありすぎ、選挙のたび違う人に入れる無党派層もいる。県市町村の首長や議員選でも同様の態度はあり得る。
▼けれど一生のうち数十回は、自分の責任と決断でまつりごとを選択してきた人と、「政治の話をするのは嫌い、投票は行かない方が賢明」などと決め込み、そうした体験に白紙の人。歳を重ねるうち、双方の人間的資質や教養には必ず差が出てくる。それは仕事や立身にも影響するはずだ。後者の人は何かやり残したことありませんか。
▼低投票率で人生を抵当に入れてしまわぬよう、払うべきものはその都度払おう。若き一票へ一言。

 2017年 10月  19日  ― 一隅に改憲背景の騒動 ―
 自民党は12年4月に憲法改正草案を決定。「自衛隊を国防軍にする」とも明記した
▼今回の総選挙でも改憲を公約の重点項目に掲げている。国防軍は争点として激論があってもよさそうだが、各党候補の遊説を聞く限りでは話題の核にはなっていない。野党の主張でよく耳にするのは安倍総理には、それ以前の課題があるとの指摘だ
▼野党諸氏は総理自身の親友や思想的崇拝者が、結果的に政治の厚遇を受けた森友・加計問題が象徴するトップの公私混同への猛省を促しているのだ。辞任すべきとの声もある。それが改憲より先だという糾弾にうなずく人もいる。突然の解散劇はあれやこれやと皮肉な面を見せている
▼そんな折、さいたま地裁が今月13日に憲法9条関連の訴訟で判決を下している。「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ77歳の婦人は所属句会の選抜で、さいたま市の「公民館だより」に自作句が3年8カ月にわたり掲載されてきた常連だ
▼ところが市は先の句は世論を二分する9条改憲絡みで、中立性を欠くとし掲載を拒否(14年6月)。これに対し婦人が市に句の掲載と、2百万円の損害賠償を求めていた裁判が結審したのだ。裁判長は判決で掲載は退けたが、市の扱いは不公正だと指摘し慰謝料5万円の支払いを命じた
▼一隅の改憲背景の騒動である。

 2017年 10月  18日  ― アテルイは東北の関羽か ―
 「花巻城の夜討ち」で好評だった盛岡市出身の民部田久さんの「余?之剣 日緋色金」を連載している。アテルイの時代の物語。宝塚、歌舞伎、ミュージカル、ドラマ、小説、漫画などアテルイは大人気。奥州市では生協やスパコン、列車にもその名が。きっとアテルイは東北の関羽なのだろう。
▼義に厚い豪傑、関羽は三国志の登場人物で最も慕われる。横浜のチャイナタウンにも関帝廟があり、中華民族の偶像だ。漢再興を狙う蜀の猛将として劉備や孔明の配下にあるが、対立する魏の曹操とも友情を結ぶ。矛を交えながら、互いの窮地を一度だけ救いあって侠気を見せる。
▼晋の時代の正史書だった三国志は当然、勝者の魏晋の側から書かれ、もとは曹操が主人公と言われる。それが蜀への判官びいきの筋になったのは、漢民族がモンゴルに支配された元の時代。民衆文学として抵抗史観が込められたから。
▼同じようにアテルイもエミシを正当化する歴史観から英雄として再発見されたわけだが、朝廷側で和平を目指した田村麻呂もまた名将であった。敵対しながら武人として義に結ぶあたり、関羽、曹操の逸話と重なる。三国志もアテルイもやはり、メディアミックス的なブームだ。
▼大昔のことで思いつくまま書いてしまったが、この推論、あってるといいな。

 2017年 10月  17日  ― 安倍総理は拉致問題解決を ―
 北朝鮮が米大陸攻撃を叫び、米大統領は金王朝爆破をつぶやく
▼大戦争はこんな言い合いからも起こる。米朝激突は米陣営下の日本に不安材料が多い。北在住の拉致被害者救出の問題もある。「めぐみちゃんが心配---」と顔を曇らせた人もいる。40年前、13歳で下校途中に北に拉致された横田めぐみさんを案じたのだ
▼彼女は今月5日に53歳になった。父・滋さん(84)、母・早紀江さん(81)にとって、娘が消えたあの日からは心安らぐ日はない。産経紙に随時掲載中の「めぐみへの手紙」に夫妻は、「あなたが煙のように消えてしまった後は文字通り、地獄のような日々でした」(17・7・17)」と書いている
▼日本政府に今必要なのはこの高齢父母のように、苦しみつつ待つ人たちに外交力で応えることだ。先例がある。小泉元総理が拉致被害者救出のため2度訪朝。02年9月には当時の金正日総書記と会談。金氏は拉致を認め謝罪
▼一部誤認もあったが生存者氏名も発表(死亡とされためぐみさんは後に生存と判明。結婚し娘がいることも確認)。金氏が了承した被害者5人は翌月に帰国。04年5月の訪朝時には前回帰国者の家族6人の帰国が実現した
▼訪朝にスタッフとして同行した安倍さんは、今度は総理としてめぐみさんらの帰国を決めてはどうか。支持率も上昇しよう。

 2017年 10月  16日  ― 菊池雄星投手の覚醒 ―
 プロ野球西武ライオンズの菊池雄星投手(盛岡市出身)は8年目の今シーズン、プロ入り以来最高の活躍を見せた。パ投手部門の最多勝と最優秀防御率の2冠を獲得。14日のクライマックスシリーズ初登板も完封劇で貢献した
▼菊池投手は花巻東高のエースとして春は準優勝、夏は4強と岩手の高校野球にその後の推進力となった。しかし、夏の最後の大会でけがを負い、高卒で入ったプロでは思うような投球ができなかった。ようやく昨年2桁勝利を挙げたが、本人には満足のいくものではなかったろう。今年はシーズンを通じてほぼ先発ローテーションを守り、途中で2段モーションの反則を指摘されるも、短期間で修正して再び勝ち星を重ねたのは見事という他にない
▼超高校級投手はメジャーからも大きな注目を集めていた。日本のプロに進む決断を語った09年10月の記者会見。途中で目頭から涙が湧き一筋、二筋と流れていった菊池投手の表情が忘れられない。メジャーの目標をいったん封印する最終判断を委ねられた重圧が表出したのだろう
▼この会見で「もう一度日本一を狙いたい」「日本一のピッチャーになってから世界に挑戦したい」と語った。高校後輩の大谷翔平選手の去就が注目されているが、岩手出身の2人が大リーガーになるのも現実味を増したか。

 2017年 10月  15日  ― 下馬評打ち消す世論調査 ―
 小池百合子都知事は、安倍総理が衆院解散の決意を表明する直前に、機先を制するように自らが代表となる国政新党「希望の党」結成を発表した
▼都民だけでなく多くの国民が昨夏の都知事選、今夏の都議選に小池陣営が圧勝したことを顧みて、総選挙でもそのうねりを見せるかどうかと色めき立ったことだろう。だが在任1年で都知事辞任はできず小池氏は予告通り衆院選は不出馬。仮に圧勝でも総理への道はない
▼この段階で小池ファンからも「今、65歳。都知事1期を務めた後の国政入りだと、いいお年」と興ざめの表情を見せた人もいる。でも野党民進党は動く。希望の党へ全員合流も決めた。だが小池代表から政策一致者のみとふるいにかけられ党は分裂。残留者を中心に立憲民主党を設立した
▼先日全国紙などが序盤の世論調査結果を報道した。そこには下馬評を打ち消す言葉が並ぶ。「自公300超うかがう」(毎日)「自民単独過半数の勢い」(読売)など公示前の自民苦戦論がうそのよう。一方で各紙とも「希望伸びず」(朝日)など希望の党が厳しい
▼野党では立憲民主党を「立憲民主倍増も」(産経)などと各紙が伝えている。以上は公示直後の世論だ。人々の候補者や党派への意識は変わることがある。選挙は最後の3日で決まるともいう。厳しい戦だ。

 2017年 10月  14日  ― 現代にも口上 ―
 「清心尼」の単行本PRのため遠野と八戸で、本を並べて売ってきた。客寄せに声を張り上げたら、口上は、「いらしゃいませ」「いかがでしょうか」「大変お安くなっております」「ご利用くださいませ」だけで、こんな無芸じゃ閑古鳥だと脂汗が出た。
▼寅さん映画と一緒に、日本の流通業から話芸が消えてしまった。子どものころ、盛岡に来た露天商は、「川徳さん松屋さんではおいくらのところ、きょうは特別におまけして」などと、だみ声で口上を並べ立てていたものだ。本当にその商品がデパートで「おいくら」の正価なのかは知らない。しかし土地ごとの老舗やプライスリーダーの名を借り、けむに巻きながら信用を得ようという口舌の妙は伝わった。
▼今は祭りの露天商もめっきり減り、デパートやスーパーで呼び込みもあまりしない。みんな対面販売ではなく、BGMを耳に静かに買うので、作り手の熱意も売り手の知恵も伝わりにくい。
▼農林水産業では、生産者が加工や流通まで携わる6次産業化が広まっている。どうせ販売もするなら、商品の命名や陳列のほか、呼び込みの口上も勉強しては。話も大事な商材。若い人なりにDJやコント風でも面白い。
▼しかしお客さん相手に、「清心尼」の売り込みはゆるぐなかった。タイトルほど、あまくはなかったね。  

 2017年 10月  13日  ― 83歳運転の車が線路に進入 ―
 若い時に車の運転免許証を取得。老齢になっても生涯無事故を目指し、安全運転を心掛けている人が少なくない
▼平成20年度の医療制度改定に伴い75歳以上の人は「後期高齢者」と呼ばれるようになる。これを機にお年寄りの区分けがにぎやかに語り合われる。75歳からが後期ならその前は前期老人だなと自問自答をする人もいた
▼「では80歳あたりからは末期か」と笑い出す人もいたし、寂しげにうなだれる向きもあった。一方「後期高齢」の呼称の普及とともに、この世代のドライバーによる事故も目立つようになる。「高齢者が高速道路逆走で事故」などと報道もされる
▼そんな時流でも運転歴50年超で無事故無違反を誇る人もいるが、やはり油断は禁物だろう。物忘れ進行が象徴するように、「うっかり事故」をいつやらかすか分からないのが高齢世代の怖さだ。3日前の22時ごろにも北海道で83歳の男性が、信じ難い事故を起こしている
▼JR室蘭線の踏切を道路の交差点と勘違いし、乗用車を右折させ線路上に進入。1キロほど走って次の踏切で立ち往生。通行人が通報したという。けが人はなかったが緊急停止や運休、遅れなど列車には影響が出た。この種の事故も老齢世代には他人事ではない
▼免許返納の是非も認知症検査なども受け、自主判断ができるといい。

 2017年 10月  12日  ― 芭蕉忌に思う ―
 先週の「中秋の名月」は盛岡からも楽しく愛でることができた。月が季語になっているのは、日本の秋の夜空ならば当然のことと改めて認識させられた。「月早し梢は雨を待ちながら」。作者芭蕉の命日が旧暦10月12日だったため、新暦のきょうは時雨忌とも呼ばれる
▼「おくのほそ道」として集成された芭蕉の東北や北陸への西行や能因の歌枕を訪ねる行脚では、平泉で詠んだ句が県人に親しみ深く、山形や新潟での句も心に響く。季節外れの夏の句で申し訳ないが「荒海や佐渡によこたふ天河」。三陸とは様相の異なる日本海と星々の輝く夜空が一つのフレームに収められた情景をすぐに想起させられる訴求力の高い描写に、凡人の身では感嘆するしかない
▼東日本大震災の沿岸被災地は明かりが少ないせいもあるかもしれないが、晴れた日の空には星がよく見える。だが、目を下に転じれば造成地がまだまだあらわで、寂しげな印象を禁じ得ない。星に犠牲者を重ね合わせる遺族もいるだろう
▼容態を悪化させた芭蕉は臨終の数日前に「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」と詠んだいう
▼被災者の再建の夢が決して夢で終わらぬよう、そのために政治は何をできるか。岩手や被災地のみならず、全国の候補には強く意識してほしい。選挙後の政権を担う側はなおのことだ。

 2017年 10月  11日  ― 平和賞授与は被爆者への賛辞 ―
 原爆の業火は広島と長崎で多くの命を奪い、後遺症で苦しむ被爆者を生んだ
▼あの日から72年が経過。悪魔の兵器とされ使用者は勝っても負けても死刑にすべき、との声も出た核兵器は今も増え続けている。そんな怖い時流の渦中だが今夏7月には国連がようやく「核兵器禁止条約」を採択した
▼条約前文には「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」との一文が織り込まれている。日本の被爆者団体の叫びに応えたのだ。採択への流れを主導したのも民間の国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN=アイキャン)だ
▼ICANは07年に同じ志を持つ12カ国の団体で結成。現在は百カ国を超え470団体が核廃絶を呼び掛けている。今年のノーベル平和賞はこのICANに授与される(授与式は12月10日)。この快挙にも日本の被爆者団体が大きく寄与している
▼ICAN当局も「広島と長崎の被爆者は経験を語り続け重要な役割を果たしてきた。この平和賞は彼らへの賛辞だ」と称賛する。民間の懸命さに比べふがいないのが、禁止条約採決の国連にも核保有国と共に欠席した日本政府だ
▼今夏の長崎原爆の日に安倍総理と面会した被爆者が「私たちをあなたは見捨てるのですか」と叫んでいた。「被爆国」という切り札をも捨てた総理を許せないのだろう。

 2017年 10月  9日  ― 解散か散開か ―
 あすは衆院解散に伴う総選挙の公示だ。この半月で構図は一気に流動化した。自公政権に対して、民進党と小池都知事の勢力が融合した希望の党、合流しなかった立憲民主党や既存野党の3極で争う異例の図式となった。
▼野党の分裂が自民党にそんなに有利に働くわけではあるまい。小池都知事らの政策は今ひとつ見えにくいが、安倍総理より保守的な政権を目指すのなら、自民党は右の政策領域を相手に占められ、左にウィングを広げた方が伸びるだろう。しかしレフトには民進党の流れをくむ立憲民主党がおり、自公は初めて2正面作戦を強いられる。
▼野党が共倒れするか、挟み撃ちで安倍一強を阻止し、政権交代できるか。いずれ支持率に焦った総理の解散と、なりふり構わぬ野党側の混迷と、国民はどちらにも厳しい視線を注ぐ。
▼しかも本県は小選挙区が4から3に減り、2区は雫石町から陸前高田市まで広がり、有権者は当惑している。候補者は野越え山越え、はいずっても遊説せねばなるまい。
▼解散と言えば、打ち上げ花火が空に大輪を広げるように万歳三唱的なイメージがある。今回はむしろ地べたに向かって散開といった方がいい。3極は身を伏せ、いつ躍り出ようか息を潜めている。改憲の是非なども念頭に置き、22日は慎重に一票を投じたい。

 2017年 10月  8日  ― 英国籍日本人にノーベル文学賞 ―
 先月初旬に読書家の親友から、17年ノーベル文学賞受賞者予想を聞いた
▼彼は「日本人だと思う」と大胆に語り出す。当方が単純に「春樹さん?」と問うと、「国内ではそういう見方があるし今も海外で読まれているけど、惜しいけど村上春樹氏の旬は過ぎたと思う。来年以降に向けいい作品を出せば可能性はゼロではないけど」と言う
▼「有力がほかにいるだろうか」と首をかしげると「長崎県出身でロンドン在住(英国籍取得)の日本人作家がダークホースだよ。カズオ・イシグロ(石黒一雄)氏62歳で、長崎の女性を描いたデビュー作品『遠い山なみの光』(1982年)が英国王立文学協会賞を受賞。9カ国語に翻訳され注目された」とも言う
▼確かに86年に長崎らしき町を舞台に戦前思想を持つ日本人を描いた第2作「浮き世の画家」も英語文学賞ウイットブレッド賞を受賞。89年の英国貴族邸老執事を語り手とした第3作「日の名残り」も英語圏最高文学賞のブッカー賞を受け35歳で英国を代表する作家となる
▼以後一昨年の最新作「忘れられた巨人」に至るまでイシグロ氏は、哲学的眼光で人間と社会の深層を描き続け、友の予感通り17年ノーベル文学賞を手中にした。授賞理由も《小説を通し人間の幻想的感覚に隠された深淵を暴いた》ことなどが挙げられている。
  

 2017年 10月  7日  ― オリジナル米の市場評価は ―
 ここ数日、盛岡地方は気温が下がり、5日は岩手山が平年より8日早く初冠雪した。「水底を水の流るる寒露かな」(草間時彦)。8日は二十四節気の一つ「寒路」
▼盛岡地方は稲刈り前の田も多いが、新米「銀河のしずく」の販売が始まった。岩手オリジナル米が相次いで流通に乗り、盛岡地方などが栽培適地の銀河のしずくは昨年、食味ランキングで「特A」評価を得た。今年は本県産としては最高級に位置付ける「金色(こんじき)の風」が全国にデビューした
▼品種の優秀さは米の専門家ともいうべき人たちの折り紙付き。昨年来の売り込む舌の滑らかさに自信のほどがうかがえた。良質の米作りに実績のある農家や農地に絞られ、最良の素材を一流の技で仕上げるがごとくだ
▼銀河のしずくは今年、作付面積が大幅に増え、ジンクスとは無縁に無事にブランドを定着させたい
▼しかし、金色の風デビュー年は、稲作農家にいきなりの向かい風。生育期に灰色の雲が広がり金色の日差しを妨げる日照不足や低温という試練に向き合わされた。生産者らの努力もあって、作柄概況を見ると、県内の稲作は凶作の心配からは解放されたが、初めての市場でどれだけ消費者の心をつかめるか。来年以降の販売に影響を与えるだろう初陣。期待を膨らませるような市場評価を望みたい。
  

 2017年 10月  6日  ― 大谷が4番・投手で復活 ―
 昨季は日本一だった日本ハム。その立役者で二刀流の大谷翔平選手が、今季は足のけがの完治が遅れ、勇姿を仰ぐ日もわずかでチームもおのずと低迷
▼ファンも寂しかったが誰よりも大谷自身がつらい日々であったろう。でも監督も大谷も体調を見抜き決断したのだろう。当方が来季からかなあと思った直後に出場したことが何度かあり、その時はうれしさが込み上げたものだ
▼盛岡出身で一時は2軍生活も経験し乗り越えてきた花巻東高の先輩・菊池雄星投手も今や西武のエースとして活躍。リーグ1位の防御率も維持し今月3日の楽天戦では、同じくリーグ1位の東浜(ソフト)と並ぶ16勝目を挙げている。この時も《翔平は来季かなあ》とつぶやいてしまった
▼ところが翌日の本拠地札幌ドーム最終戦のオリックス戦に、翔平が何と「4番・投手」で出場したのだ。県民ファンも感激しただろう。試合では復活した二刀流を見せてくれた。投げては最速162`を計測し10奪三振と好投。124球を投げた
▼4番打者としても四回第2打席で小気味よい中前打を放ち、5・6番も出塁し7番大田の右中間3点二塁打で先制のホームを踏む。結果は3対0と完封勝利を果たす。なお2リーグ制以降「4番・投手」の先発出場は66年ぶりでパ初の快挙だ。来季の飛翔に期待したい。

 2017年 10月  5日  ― 防空訓練いまむかし ―
 9月末に盛岡市の担当と高松の町内会が北朝鮮ミサイルに備えた初の防空訓練をした。写真を見ると、座布団を被って伏せている。これでは72年前の盛岡空襲の時の方が、対応がしっかりしていたのではないか。今は防空壕も何もない。
▼日本人が核廃絶を願うのは当然だが、物理的な被害対策は皆無だったことにがくぜんとする。今から東京や大都市にシェルターを作ったら、どれだけの時間予算労力を費やすことか。地下鉄や地下街は利用できるだろうが。
▼軽井沢町が鉄道の廃トンネルを核シェルターにするニュースを見て思いついた。「シェルター列車」「シェルター船」を作っては。これは中小都市や天災時にも使え、安上がりに早くできる。
▼廃棄する客車や、退役する老客船を改造する。最低限の寝台と水食糧、トイレ、医療を備え、できるだけ大勢すし詰めにしても、安全なトンネルや山影、海上に待避する。爆撃や地震台風の直撃を免れるだけで命は助かるのだ。
▼それでも限られた国民しか守れないから、誰を乗せるのか、あと数分というときには役立つのか、問題はあるだろう。しかし今はJアラートが「頑丈な建物に避難」と鳴っても、「ミサイル見さ行ぐな」と布団をかぶり、目を閉じているしかない。政権が右左どうあれ、国民の生命を守るのは基本だ。

 2017年 10月  4日  ― 車なき高齢者の移動支援 ―
 わが家が居住する地域は郊外の田園地帯だ。遠い山並みの景観もいい
▼ただ時代の流れで当地も高齢化が進む。近隣を見ても5世帯のうち4世帯は老齢者だ。地域差はあろうが高齢化は止まらない。同時に目立つのは高齢者の運転免許証返納だ。確かに高齢者による高速道路の逆走がもたらす事故も多い。免許証返納は自分のためでもあろう
▼老夫婦だけでも健康で車を持ちどちらかが運転できれば、買い物も病院往復も困らない。だが免許証返納などで車のない生活になると、買い物をする店や通う病院が遠いと困り果ててしまうだろう。これは全国共通の問題で多くの自治体も支援に動き出している
▼それぞれ趣向を凝らした対応をしているが佐賀県有田町では、町所有車に運転手のほか介助者も同行。希望する高齢者を自宅からスーパーなどへ移送し、買い物が済むと再び自宅へ送る支援を始めている。しかも料金は無料だ。利用者は感慨無量だろう
▼本県でも本年度は花巻、雫石、紫波、矢巾など5市5町1村で独自の支援を進めている。なお自治体主導とは別に高齢化率の高い岩手町豊岡地区で、住民主導の買い物バスが8年も前から運行されてきたことは特筆されよう
▼今月から町がバス路線を一新するので、高齢者らに愛されたバスは先月29日に任務を終えている。

 2017年 10月  3日  ― 政権選択選挙といわれ ―
 第2次大戦は終結しても世界は新たな戦禍をもたらした。植民地だった国々が民族自決を唱え独立の動きがアジア・アフリカで続出。同じ民族同士の戦いには自由主義と共産主義の大国の代理戦争的性格を帯びたものもあり、米ソが交戦しかねないキューバ危機も生じた
▼東西冷戦はコラム子が中学で学んだ一つだが、当時は浅学のゆえばかりではなく、冷戦が早晩解けるとは考えることすら及ばなかった
▼日本が平成に入った1989年11月9日、東西分断の象徴であったベルリンの壁が崩壊、翌年10月3日には45年ぶりに東西ドイツが統一し連邦共和国が誕生した。自由経済を容認した共産国や宗教を主軸とした国などが生まれ、日本は90年代に非自民政権が誕生したことで55年体制が終わりを告げている
▼日本では衆院に小選挙区が導入され、政権交代可能な二大政党の実現が折々に唱えられてきたが、国家体制の違いを外した対立軸を作るのに日本はまだ不慣れのようだ。政権交代は実現しても、現実には政権復帰後の自民党の強さばかりが目立つ昨今。加えて一時は政権の中心だった旧民主党が没落し、老舗政党以外は解党や合併あるいは新党と、衆参の選挙ごとに新しい党名の政党が複数出てくる
▼次の選挙では消えないような足腰の強い政党の台頭は見られるか。

 2017年 10月  2日  ― 盟友の霊に政権交代誓う小沢氏 ―
 小沢一郎自由党代表と、羽田孜(つとむ)元総理は同時期に政界入りした
▼その羽田氏が8月末に82歳で逝去。先月初旬に行われた告別式では小沢氏が弔辞を述べている。一方、同25日には14時すぎに小池百合子都知事が国政新党「希望の党」結成を発表。同日夕刻には安倍総理が予定通り「28日衆院解散」の決意を表明した
▼小池都知事が新党代表に就き「希望の党」が始動。近づく総選挙に向け小沢氏は野党総結集を提唱。結果的に「名を捨て実を取る」と決めた民進党をはじめ、野党側からも同調の動きが見られる。安倍総理の目算の狂いは明白だが後には引けず衆院は解散した
▼目下、10日の公示に向け前哨戦が火花を散らしている。小沢王国とまで言われてきた岩手の有権者としては、支持の有無とは別に「小沢さんの動きと本音」が気になる向きもあろう。そこで先の弔辞で抱負を語っていたことを思い出し全文を読んでみた
▼かつて孜と一郎が自民党を離党して新党を結成。2大政党制構築に全身全霊を傾けたことも回想している。その試みが2年余でついえたことも省み1強多弱の現況も憂慮。「もう一度政権交代を実現し君に報告したい」と述べている
▼先月は民進代表前原・小池・小沢の3者会談もしている。小沢氏が強い意志で臨んでいることが分かる。

 2017年 10月  1日  ― 解党乱麻を立つ ―
 小沢さんらが新進党を立ち上げてから23年になる。当時の流れを一方でくんでいた民進党が消えかかっている。
▼不思議でならぬのは、なぜ野党のまま我慢してまとまっていられないのか。与党がこければ、必ず民意はまた寄せられるのに。結んでほつれ、よりを戻してまた切れて、総選挙での野党議員の動きはまさに「解党乱麻を立つ」。
▼足踏みしたままでは不安になるにしても、動けばいいというものやら。小池都知事が1年やそこらで衆院に戻るなど、あってはならない。有権者に見せるべきは乱麻ではなく、絵柄は地味でも縦糸横糸しっかり縫い合わせた織物であり、国民生活にそれを敷き詰めるのが政治だろう。
▼確かに与野党の議席は大差があった。政治家も国民も、なしくずしに昔の一党優位制に戻ったような気がして批判勢力は焦っている。しかし小選挙区制が骨格をなす限り、2大政党制のフレームは保たれる。そこで与野党の議席が開くのは必然で、政権選択の黒白が付くよう、選挙制度はまがりなりに機能しているのだ。
▼政治は結果責任だが、足踏みしていたって悪いことばかりでない。最近は若い人にまた足踏みミシンが人気だそう。ちょっと前は民進党も、縦糸横糸きれいに織り上げられたのにと思うのだが。きょうから衣替えとはいうものの…。
  

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