2018年10月の天窓


 2018年  10月  31日  ― ハロウィーンの群集心理 ―
 きょうはハロウィーン。日本ではここ数年、仮装した大勢が集まる東京・渋谷の様子が新聞やテレビで報じられるのが恒例に。今年も直前の土日のにぎわいぶりが伝えられた
▼濱嘉之さんの小説「警視庁公安部青山望 爆裂通貨」ではハロウィーンの渋谷で仮装したグループによるATM強盗と殺人が起きる。登場人物の警察官が、海外から殺し屋を潜入させ渋谷のスクランブル交差点などのハロウィーンの仮装に紛れ込ませたら「どんなテロだって確実に実行できる」とこぼす。コスプレ姿の外国人が、渋谷のハロウィーンは「とにかくクレージーで、母国でも有名さ」と語るのは日本に渡って異質になっている表れと言いたいようだ
▼国内に急速に拡散した印象の強いハロウィーンは、古代ケルト人の秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的意味合いを持つ風習だった。米国で宗教的な意味がそがれた行事となり、仮装の面が肥大していった。起源よりも、子どもたちが魔女などに扮(ふん)して近所の家を回るというのが、米国経由の日本人が抱く一般的イメージだろう
▼今年の渋谷では軽トラックが横転させられ被害届が出され、暴行や盗撮の疑いで逮捕者が出ている。街中に散乱したごみも高揚した人々のマナーの悪さを物語る。群集心理とだけで片付けられまい。

 2018年  10月  30日  ― 雫石町民の政治意識 ―
 副知事、参院議員を務めた故・高橋令則さんに「首長2期」の持論を聞いたことがある。
▼1期目は下の三役や部長が番頭さんとして手綱を取ってくれる。仕事に慣れた2期目に本領を発揮してもらうのだが、そののち番頭さんは定年で辞める。当選した頃に実務者レベルの職員が上がって管理職。その人たちの意識において首長は雲の上の人、出世しても距離感は埋まらない。幹部らの忖度(そんたく)により、どんどん天の上に祭り上げられてしまう。
▼無論これは行政マンとしての高橋さんの経験則、政治哲学であったろう。3期以上の多選でも初心を忘れないリーダーは大勢いる。
▼しかし2期8年の首長任期を、律儀に守る町がある。雫石町だ。現職の深谷政光氏の3選を、猿子恵久氏が阻止した。猿子陣営には川口民一、川口善弥、中屋敷十3氏の歴代町長がそろい踏みして応援した。皆さん2期で降りているため、いまだ健脚だった。雫石は住民の票決で長期政権を許さない。政治感覚に長けた土地柄。惜しむらくは政争に走りすぎるきらいがあり政策論争が見えにくい。
▼今後も2期の交代が続くか否かは猿子新町長の力量次第だが、厳父や祖父のように君臨するより、兄貴と呼ばれるくらいの信頼で町民と結ばれた方が良いのかも。新鮮な手腕に期待しよう。

 2018年  10月  29日  ― 高齢者職場の課題改善 ―
 「高齢者」とは何歳からか。世界保健機関では「65歳以上」と定義している。日本の医療や福祉関係の制度でも、65歳以上を高齢者とし「65歳以上75歳未満」を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と称している
▼今年2月に首都圏で警備会社に勤務する68歳の男性が、担当する私立高校で夜間勤務中に急性心筋梗塞を発症し入院。2カ月後に亡くなったことを思い起こす。「休憩も取れなかったほどの長時間夜間労働」などの実態が浮上したことが忘れられない
▼男性は当初は3人体制の警備を1人の休職が続いたため、2人で交代勤務をしていたのだ。帰宅することもできず3日間連続勤務もあった。仮眠時間も規定より短くなって休憩時間も短縮。高齢のわが身を痛め続けたのである
▼68歳になっても仕事を辞められない現実に苦しんだことであろう。男性の年金は月に14万円ほどだったという。家賃の支払いもあり家族の生活のためにも高齢でも、仕事を辞めるわけにはいかなかったのだ。同様に苦労しながら働く高齢者は少なくない
▼せめて高齢者が勤務する職場は課題の改善を急ぐべきだ。先の男性の職場のように「一人の欠員が補充されないような事態」を経営者は放置してはなるまい。できることなら高齢者が「生活のために働かないで済む時代」を到来させたい。

 2018年  10月  28日  ― 県立大に西澤哲学 ―
 県立大の初代学長の西澤潤一さんが亡くなった。92歳。半導体、光通信の父として科学立国をリードした。
▼県立大建学にあたり「素心知困」の座右を贈った。「素直に学び、他人を慈しめ」との西澤哲学だが、当初、「困る」が入った言葉を学生にとは、いかがなものかとの声があったそうだ。困っている人を助ける惻隠の情はもちろんとて、そこには「上手に困れ」という、西澤さんのチャレンジ精神が込められていたのではないか。
▼かつて西澤さんと話したとき、こちらのおつむにはしんどい物理系の内容に、計算機という言葉がしきりに出てきた。計算機と言えばシャープとかカシオの安いやつだろう。ノーベル賞級のテーマにそんなのでいいの?と思っていたら、よく聞けば計算機はコンピューターのこと。西澤さんはパソコンなど普及するはるか前から電子計算していたので、いかなるスーパーコンピューターでも、計算機に過ぎぬのだろう。
▼今は何でもネットで検索して事足れり、メールで連絡すれば会わなくていい、それでは「必要は発明の母」の探究心は衰えてしまう。日本人初のエジソンメダル受賞者だった西澤さんは、そんな危機を見越していたのではないか。
▼難題に困りながらも、岩手山麓に駒を進める学府たれ。知の巨人の遺産を次代へ引き継ごう。
  

 2018年  10月  27日  ― 日本の卓球にTリーグ ―
 アートディレクターの浅葉克己さんが30年以上前、東京で卓球ショーを企画開催したことがあった。80年前後としか正確な日と会場は覚えていないが、大会ではなくショーだった。会場の中心に置かれた卓球台がそれまで見慣れた緑の台ではなく今見られる青だったような気もする。景気のいい時代で豪華な演出だった
▼タモリさんが卓球はネクラと言い出し日本中にイメージが広がっていたころだ。大の卓球好きの浅葉さんにはイメージを覆したい情熱があったのだろうか。引退発表した福原愛さんがマスコミに取り上げられるはるか以前。浅葉さんの仕掛けも限定的なものにこの時は終わった
▼愛ちゃん人気とともに卓球への国内の関心も高まり、競技力も格段にアップ。中国や昔から実力のあるヨーロッパ勢に迫る力を付け、日本選手が勝利しても不思議ではなくなった。男女ともオリンピックでメダルを取る強豪となった日本。さらに若手の有望選手が世界の舞台で躍動する。20年の東京でも日本のメダル有力競技だ
▼愛ちゃんの引退表明が海の向こうにも伝わって間もなくの24日、日本の卓球リーグTリーグが開幕した。トップレベルの試合が見られるだけでなく、観客目線も重視した運営にも期待が高まる。浅葉さんの何十年来の願いへさらに近づく一歩となろう。
  

 2018年  10月  26日  ― グレイヘア(白髪)への憧れ ―
 例外もあるが大半の人は年齢とともに黒髪に白髪が混じり、やがて白髪が黒髪を制していく
▼それは成り行きに任せる次元ではあるが美しさを求める人間の世界では、理容や美容の手を入れる工夫も重ねてきている。その過程で美容に敏感な女性を中心に、より美しく素敵な自分にするためのさまざまな工夫が生まれている
▼最近では白髪(グレイヘア)と白髪染めの在り方も検討されている。これらのテーマについては主婦の友社が16年8月(第1回)と、今年2月末〜3月5日(第2回)の2度に渡り、会員にネットアンケートを実施している
▼それによると第1回からわずか1年半後の第2回の結果は、女性たちのグレイヘアに対する意識が大きく変化していることを示している。グレイヘアについて回答した女性たちは「素敵・美しい」とイメージする人の割合が、前回は8・5%だったが今回は40・8%と約5倍に急増している
▼「白髪染めをしている人(または将来的に白髪染めをするつもりの人)もかかる手間やコスト、肌トラブルの懸念などから、その6割が「いつかは染めずにグレイヘアで」という意識を持っていることが明らかになっている
▼さらに全体の8割の人たちが「美しいグレイヘアに憧れる」と回答している。白髪対応一つにも意識は鮮明である。

 2018年  10月  25日  ― 障害者雇用水増しの常態化 ―
 中央省庁の障害者雇用水増し問題への弁護士らによる検証委員会が出した報告書は、国と地方自治体を合わせ約7500人の不適切計上を認定した。独自の実務慣行に基づくずさんな計上方法を安易な前例踏襲で長年引き継いだ、相当数の不適切計上があったことは極めて由々しき事態、などと厳しく指摘している
▼障害者雇用促進法では官民に一定割合以上の雇用を義務付けている。未達成の民間企業は、従業員100人超以上の場合、納付金という名の罰金を厚労省所管の独立行政法人に支払わなければならない。一方、国や地方自治体に違反への納付制度はない
▼性善説、性悪説に当てはめれば国に機関は性善説を自認しているのかと思わざるを得ない。ところが雇用率達成と見せかける、あの手この手まで示されると性善説は認められない。たとえ制度への認識不足が原因としても、障害者雇用促進法の趣旨を理解しない官庁は批判を免れないだろう
▼国と地方自治体は報告書が認定した約7500人の障害者の雇用機会を奪った。民間の雇用への悪影響も心配される。安倍首相が15年10月の第3次改造内閣発足時に唱えた一億総活躍社会は、先の戦争の一億総玉砕などを連想させるとの不評もあったが、今回の水増し問題の反する内実にキャッチフレーズが空しく躍る。

 2018年  10月  24日  ― KYBは恐いべ ―
 油圧機器メーカーKYBの免震・制震オイルダンパーのデータ改ざんで、盛岡中央消防署まで同社製品が使われていた。他の公共施設にも問題が広がり、防災の本丸にまで不安が及ぶようでは困る。
▼地震で倒壊した建物と言えば、関東大震災の浅草十二階が思い浮かぶ。とがった上の階がボキリと折れ、中にいた人は死んでしまった。加藤昭雄著「岩手の戦争遺跡をあるく」によると、残った下の階は、災害派遣の盛岡の工兵第八連隊も携わり、無残に爆破解体された。
▼浅草十二階は日本の高層建築の先駆けだった。見栄えだけのやわな造りで、烈震にひとたまりもなし。その後は東京も大阪も名古屋も高層ビルを諦めた。戦後は建築が発達し法規制が緩和され、前の東京五輪に備えて建ったホテルニューオータニで、やっと日本に高層が復活。
▼続いて霞が関ビル、浜松町の貿易センタービル、新宿の京王プラザなど摩天楼がどんどん林立したが、阪神など大都市を襲った震災で倒壊したことは一度もない。建設業界や建築基準法上の努力があったゆえだ。KYB入居の貿易センタービルは東京で2棟目の超高層。解体で姿を消すそうで、経営も倒れないように。
▼しばし前KYと言えば、「空気が読めない」だったが、KYBの3文字が「恐いべ」と読みたくなる。

 2018年  10月  23日  ― 政治家の陰険な質疑 ―
 政治家の失言といえば麻生太郎副総理兼財務相の言葉が、あれもこれもと浮かんでくる
▼昨秋の衆院愛媛3区補選応援演説では「選挙を一生懸命やっている人は、お祭りを一生懸命やっている人で〜ほとんどきちがいみたいな人ばかりだ」(9月2日)と脱線。選挙活動をする人やお祭りを盛り上げる人への配慮もない
▼国会をはじめ市町村議会に至るまで人格と地位を象徴するようなバッジを付けた議員諸氏には、まずは礼節がにじむような振る舞いを心掛けていただきたい。言葉は政治家の生命だといわれるが麻生氏のように、失言を連発してもその政治生命を絶たれない人がいる
▼それがもし親類筋の安倍総理が擁護し容認しているのであれば、それはそれで深刻な問題だ。国民に対する総理の説明を聞きたい。一方、中央の反映なのか地方議会でも、本音をはらんだ暴言に近い失言放言が散発している
▼さいたま市議会では今月9日の本会議で、4期目の女性市議で常時車いす使用の身障者傳田(でんだ)ひろみ氏が、同僚の質疑の中で「ブルジョア身障者」呼ばわりをされた。同僚は心身障害者医療費支給条例改正案審議の中で、傳田氏の1354万円余の年収も公表。「金持ち身障者」とやゆしたのである
▼議長が質疑者に厳重注意をしたというが陰険すぎる暴言だ。

 2018年  10月  22日  ― 大阪万博の夢ふたたび ―
 2020年の東京五輪に続き、大阪万博も2025年2度目の開催を目指している。中劇で上映中の関根光才監督のドキュメンタリー「太陽の塔」が面白い。
▼自分も1970年の大阪万博に幼稚園児で行ったが、アメリカ館の月の石やフランス館のコンコルドなど、子どもに目移りしやすいものにたまげてしまい、岡本太郎作品のシンボル太陽の塔は、よく分からなかった。未来的なパビリオンのうち、そこだけちょっとおどろおどろしかったことは憶えている。
▼「芸術は爆発だ」の岡本は東北文化に造詣が深く、縄文に限りないあこがれを抱いた。だから太陽の塔も土偶のようにぼってり、不思議なシルエット。映画には岡本が写真を残した花巻の鹿踊りや、東日本大震災後の陸前高田も映る。中沢新一や赤坂憲雄などの哲学者が巨匠を論じ、現代文明や東北を語る。
▼それだけではない。岡本は作品にマントラのような仏教観も込め、チベット人までうならせていた。あの世なのかこの世なのか謎めいた造形に、「芸術は托鉢だ」の意味深さもあったのやら。
▼次の万博は1カ月後に、博覧会国際事務局総会で開催地が決まる。候補地はバクー(アゼルバイジャン)、エカテリンブルク(ロシア)も。岡本没後22年。鬼才の功徳で、再び大阪万博を見てみたいよう。

 2018年  10月  21日  ― 炭で焼くサンマの至福 ―
 「風の日は風吹きすさぶ秋刀魚の値」。「馬酔木」同人から「鶴」を主宰した石田波郷の生きた時代も水揚げの多寡で値の上下が激しかったろう
▼ここ数年、国内のサンマ水揚げに不振が続き、昨年は刺し身でうまいサンマに出合わずじまい。今年は往時の豊漁とは言えないものの、かなり持ち直し身の太くて脂ののったサンマを食べることができ、舌や胃袋に季節感を存分に味わわせることができた
▼家のコンロは電磁調理器。脂ののった魚を焼くのは控えており、塩焼きはもっぱら外食になってしまった。少年期の家には七輪があって戸外で焼き物をすることもあった。夕暮れの早い時期なので夕食のサンマは早い時間の調理になったが、焼きたてでなくても炭で焼かれると程良く水分も残り、ふっくらとしておいしかった記憶がある。ガスコンロの直火になってからは、いくら旬でも炭焼きほどのうまさは感じられなかった
▼バーベキューの道具で炭焼きを楽しむ家庭が増えている。だが、肉類が中心で魚はせいぜいサケ・マスやサーモン。サンマが網に乗ることは少ない。郷愁もあって七輪で風情も味わいたい。来年はサンマに備え七輪を購入しようか。サンマに限らず漁業資源の減少が懸念される昨今。まずは不漁に戻り秋を感じる楽しみが奪われぬようにと念じよう。

 2018年  10月  20日  ― 東電元首脳が地裁で被災者に謝罪 ―
 この国の大震災はしばしば大津波を伴う
▼改めて省みるが7年前に起きた東日本大震災津波は、福島県にある東電原子力発電所も襲う。いたぶられた原発からは放射性物質が飛散し、広範囲に渡りその輪を広げた。人体に悪影響があり原子炉周辺地域の住民は、より遠くへと逃避して遠隔地で避難生活を模索する
▼この避難の旅は難行苦行で涙を誘う悲劇も起きている。原発周辺の全住民は逃げなければならないのだ。大熊町にある双葉病院は入院患者もいたが、長時間に及ぶ避難を決行せざるを得なかった。必死に逃げる側もその人たちを受け入れる側も四苦八苦であったろう
▼悲しいことにこの過酷な移動で、入院患者など40余人が命を落としている。大津波が原発を襲撃する前から地元で目指していたのは「最大15・7メートル」の防波堤だった。過去の大津波を勘案した数値なのだが、これが未完成のうちに巨大津波にやられたのだ
▼ところで今月16日には東京地裁で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営者3人の公判が行われた。その中で東電原発部門の実質的責任者だった武藤栄元副社長が謝罪をしているのが注目される
▼「亡くなられた方やご遺族、避難をしている多くの方々に言葉で言い表せない迷惑を掛けていることを深くお詫びします」と。

 2018年  10月  19日  ― 菊池投手ら県勢選手のCS ―
 10・19と語り継がれる個人的に忘れられないことがある。プロ野球パ・リーグの優勝が懸かった今はなき川崎球場でのダブル・ヘッダーだ。今からちょうど30年前になる。ホームのロッテと対戦した近鉄は2勝すれば優勝という大一番。いつもは空席の断然多いスタンドが超満員、入れない人で球場の周りがあふれかえった。急きょテレビが全国中継となり、パが注目される当時では異例の事態となった
▼この年の近鉄は首位に付けられた大きな差を快進撃で縮め優勝争いは最後まで分からない展開。この日の近鉄は優勝に2連勝が必要。第1試合を1点差で勝利も、第2試合は互いに譲らず規定により延長10回引き分けとなり優勝を逃した。翌年の近鉄優勝はファンならずとも喜ぶ人が多かったと思う
▼88年のパ優勝は黄金時代の西武だった。今年の西武はエースに成長した菊池雄星投手をはじめ主砲の山川穂高内野手、外崎修汰内野手と中心選手に岩手ゆかりが並び、リーグ優勝を果たした
▼日本シリーズ出場を懸けたCSが17日から始まった。西武と対戦しているソフトバンクには松本裕樹投手が所属。セ優勝の広島には高橋樹也投手が所属する。大谷翔平選手がメジャーに行っても、県人の期待するプロ野球選手がいる。大一番で彼らが躍動する姿を多く見たい。

 2018年  10月  18日  ― 吸いませんけどすみません ―
 松井大阪府知事が議会中に公用車でぐるぐる周り、車内で喫煙していたという。何より議員に失礼だし、いらない排気ガスをまき散らし、ガソリン代で税金を無駄遣いしてはだめですよ。
▼しかしお叱り覚悟で書くが、喫煙者の肩身の狭さにいささか同情を禁じ得ない。たばこの煙害が周知され、国民の健康が増進したのは良い。禁煙や分煙の進歩は多とすべき。それでも、たばこは嗜好品として許されている。愛煙家は大勢いるのに最近の喫煙環境を見ると、これでもかこれでもかと追い詰めているよう。
▼「もりおか時めぐり」で上田かいわいを取材したとき、JTの前身の専売公社の存在の大きさを聞かされた。現在の県立中央病院の場所にあった。1970年代に移転して廃虚になった後も近くを通ると、やに臭かったものだが、大きな工場があったおかげで地域は発展した。
▼吸うごとに税金だって納めているし、県内農家は基幹作物として葉タバコを生産している。たばこ屋さんには公衆電話と電話帳が置いてあり、親切に道案内してくれた。そんな街角も今は昔。
▼あまりぎすぎすしないで、マナーあるスモーカーにはもう少し安らぎがあっていいのでは。ちなみに自分は生まれてこのかた1本もたばこを吸いませんが、余計なこと申し上げてすみません。

 2018年  10月  17日  ― 終活ルールが国主導へ ―
 経団連が2021年春入社以降の新卒者に就職・採用ルールを適用しないことを決めた。長年続いた就職協定の廃止は企業の中には採用活動を解禁前にするなど情勢変化が背景にある。人手不足が今後も続くと見込まれる中、若手人材の奪い合いに協定が足かせとなるというのが経団連の見立てだろう
▼協定廃止に伴い政府は15日、関係省庁連絡会議の初会合を開いた。採用面接の解禁時期がいつになるのかが焦点の一つで、就活時期の早期化による学業へのマイナスを懸念する大学、学生の意見をどう反映させるが重要な要素。政府の会議では対象初年度となる学生には今のルールを維持することで大筋合意した
▼近年は日本語の短縮が顕著で、婚活、終活など「●活」という単語を頻繁に目にする。中にはパパ活なるものがある。第1子誕生を控え父親になるための準備活動ではなく、かつての援助交際がパパ活に置き換えられたにすぎない。援助交際の内実をオブラートに包んで罪悪感を和らげたつもりの使い方かもしれないが、こちらは解禁の許されない、ルール以前の問題だ
▼今でも3年生には就活を始めているのが実情のようだ。大学で何をするのかが軽んじられているのか。就活に明け暮れ、勉(強)活や研(究)活の時間が押しやられるような学生生活は避けたい。

 2018年  10月  16日  ― 南部鉄器でくいだおれ ―
 盛岡市のタヤマスタジオが来春「鉄瓶の多い料理店エンガワ」を開店するニュースがあった。南部鉄器は日本を代表する伝統工芸だが、もとは日用品。もっと外食産業の店頭で活用されるべし。
▼店先の人形が有名だった大阪の「くいだおれ」に、南部鉄器と深い縁があった。開店の宣伝に創業者が一計案じた。わざわざ鉄器の巨大鍋を注文し、岩手から貨車で運び、荷車に載せて牛が引いた。その牛を道頓堀にうろうろさせ食堂の開店の呼び込み。
▼巡査が駆け付け、「道頓堀は馬車で通行禁止。大阪市の交通規則だ」と追い払った。「これは馬車やない。牛車でん」と創業者はやり返す。「馬車でも牛車でも同じことだ」と巡査はカンカン。「馬と牛が同じでっか。そんなアホな」とばかにして。終戦直後のちまた。面白がるやじ馬を集め、店のすごい宣伝になった。
▼くいだおれは残念ながら10年前に閉店したが、難波のシンボルだった店ののれんを南部鉄器が開けたとは痛快。鋳物は自動車産業の鋳造に連なる工業立国の基礎。床の間に飾っておくだけならもったいない。
▼岩手県と中国雲南省は南部鉄器とプーアル茶の組み合わせで消費拡大を図る。鉄瓶でお茶を飲むと鉄分が健康的、湯をまろやかにするという。食欲の秋は大きな鋳物の鍋で、芋の子汁もまたよし。

 2018年  10月  15日  ― 都市の潤いをいかに ―
 土地区画整理事業以前の拙宅は、お隣の旧家の大木は見れば見事だが、台風が近づくとなると倒木を心配した。秋の時期にはケヤキとカツラの落ち葉が当方の敷地を敷き詰める。樹齢数百年だけに葉の量も相当。枝張りが拙宅に及んでいたため、落ち葉掃きに小言も出た
▼台風や暴風雨、大雪の災害では、倒木の被害がよく出る。数年前には盛岡の街路樹の折れた枝が落下し、市民がけがに遭われたことも。道が通行止めになったり家屋が損壊したりする。けれども、暑い日の木陰、ほこりや騒音の緩衝、四季折々の景観など、多くは木々の恩恵を受けて暮らす。都市にもっと緑をと願う市民は多いはずだ
▼盛岡市の官庁街の一風景となっていた内丸緑地のヒマラヤ杉の伐倒が始まっている。1970〜71年の植樹から半世紀近くに及んで、そびえる樹高になった。現もりおか歴史文化館前のヒマラヤ杉も安全面から、大半が姿を消したが、内丸緑地も皆伐の運命となり年内に消滅。年度内には根こそぎ′@り出される
▼木があった状況しか知らない側にとって、皆伐後の景観に対する印象を現段階では想像しにくいが、なんとなく物足りなさを覚える予感がする。ビル街の貴重な緑地。市民の知恵を集め、より潤いのある空間を創出すれば、ヒマラヤ杉も報われるに違いない。

 2018年  10月  14日  ― 「盛岡ノート」と「津軽」 ―
 今年は太宰治没後70年もさりながら、詩人の立原道造が盛岡入りして80年目だった。1938(昭和13)年9、10月、愛宕山のほとりに遊んだ。
▼立原と太宰は少し交際があった。檀一雄の「小説太宰治」によると、東大の中ですっかり身を持ち崩した太宰が、工学部でピカピカの立原に声を掛ける。浅草へ遊びに誘い、逃げられる場面があった。ふたりはのち「日本浪曼派」に接近したので、小説と詩歌に響き合いはしたろうが、理知的な立原のこと、悪たれの先輩太宰にビビったか。花街通いはご免ですと。
▼しかし立原の「盛岡ノート」と太宰の「津軽」は紀行文学として似ている。どちらも戦時下の世相を逃れ、人生のピリオドの予感のうちに書かれた。達観した文体に哀惜をはらみ、切ない旅路がある。ふたりが愛した啄木の影ものぞく。
▼違っているのは「津軽」がどこの本屋でも買えるのに、「盛岡ノート」は絶版。2007年に復刊したが、それも入手しにくい。立派な体裁より、普装版の文庫本で良いから再刊できないか。盛岡で立原を世話した深沢紅子の絵や、加藤健の詩も入れて。
▼4年前に立原の連載を書いたとき、読者から「盛岡ノート」はどこで売っているかと結構な問い合わせがあった。来年は没後80年。街に引き立つ文学の香りを。可能と思います。

 2018年  10月  13日  ― 橋の名は ―
 矢巾町の田尻橋が架け替えられ、煙山小児童が銘板の字を書いた。東部配水場の銘板も矢巾東小の子が書き、小学生の筆を引き立てる計らいは素晴らしい。
▼橋について最近、思うところあった。盛岡市の大宮政郎さんがアイオン台風で山田線沿いの復旧にあたり、流された橋に難儀したという取材で、米内川沿いを歩いた。どこの話か。
▼古い橋が多い川。中には「昭和24年架橋」と刻まれた欄干があり、前年のアイオン台風後に架け替えられたと思われるが、どの橋も由来がよく分からない。あまり上流まで深入りするとクマが出そうだから途中で引き返した。
▼橋梁(りょう)は建物より公共性が高く、重要な社会資本にかかわらず、構造や来歴を書いた本は少ない。岩根哲哉著「北上川の橋」(日刊岩手建設工業新聞社)によると、川の長さに対して橋の数を割り算定する「橋梁密度」は北上川でさえ、他の大河に比べ高い水準ではないという。
▼盛岡市と合併前の都南村は、「西高東低」と言われた。北上川に橋が少なく、手代森や黒川の住民が津志田の役場に行くのが大変で取り残されていると。30年ほど前、都南大橋が開通し便利に。その後、矢巾町には渡し船の名にちなむ長徳橋ができた。由来の碑が建つ。これからも銘板を児童が書くなら、橋名に愛郷が共鳴する。  

 2018年  10月  12日  ― 平和賞の声なき声 ―
 今年のノーベル平和賞には、イラク人女性で25歳のナディヤ・ムラドさんが選出された
▼彼女は過激派組織「イスラム国」(IS)に性奴隷として拘束され、被害者の立場から性暴力根絶を訴えたことが評価されたのである。8日には米国のワシントンで記者会見し決意を語っている。「声を上げられない人々の声になり、正義を求めている人々のために立ち上がる」と
▼平和は世界全体のテーマだがそこには個々の一人一人の平穏が必須の条件となる。この地上に一人でも性奴隷として拘束され、苦しんで地獄を味わっている女性がいれば、世界の平和はそこから崩れてしまう
▼ムラドさんが言うように声を上げられないで苦しんでいる多くの女性が、世界には現実におられる。例えばムラドさんがアフリカの地から呼び掛けているように、共感した人から声援の輪を広げていきたい
▼彼女はノーベル平和賞受賞を「とても光栄」と語りながら、「同時に大きな責任を感じている」と言い、心情と抱負も述べている。「世界中の性暴力の被害者を含めた全ての戦争の被害者と、賞を分かち合いたい」と
▼性暴力の根絶も戦争の廃絶も、平穏な生活と平和な世界に直結している。アフリカの天地から叫ぶムラドさんの声に呼応し、日本の大地からも平穏と平和への歩みを始めたい。

 2018年  10月  11日  ― 芸術か犯罪か ―
 盛岡市の中津川に架かる毘沙門橋など市内十数カ所でスプレー塗料で落書きした男が先日、追起訴された。罪状は器物損壊。盛岡では昨年も別な男による開運橋などに落書きの被害があった
▼ストリート芸術家として世界的に著名ながら正体不明のバンクシーの絵画がサザビーの5日のオークションで約1億5500万円で落札直後、原画だけが滑り落ち、半分ほどシュレッダーされた。その瞬間は映像に残り、ニュースで流れた
▼バンクシーはゲリラ的にストリートアートを描くと同時に風刺性でも有名。美術館に無断で自作を展示することもあるが、器物損壊や不法侵入で捕まったという話は寡聞にして聞かない。落書きではなくアート作品と認められているためか。むしろ氏がわが街に出没して描いてくれないかと思う各地の有力者もいると聞く
▼バンクシーのかの絵は、傷つけられた、いや価値を高めたと、思わぬ話題に発展。たしかに制作した段階でシュレッダーを仕込んでいれば、作品の一部となる。シュレッダーが作動したのが落札直後という絶妙のタイミングが、計略説まで生んでいる
▼赤瀬川原平さんの千円札裁判では芸術と犯罪をめぐる論争があった。論争の引き金となることも芸術表現の持つ値段の付けられない価値か。だが、ただの落書きは代償を伴う。

 2018年  10月  10日  ― バカマツタケの人工栽培 ―
 本州北部に位置する岩泉町は、秋の訪れが早い。国内有数のマツタケの産地でもある
▼北上高地の山々が蓄えた雨の滴は清流や湧水となって町を潤す。一方、山々にはアカマツ林が繁茂しマツタケはこの林に、輪状または列状に並んで生育する。40年ほど前に岩泉を訪ね独特の芳香と形に魅了されて以来、わが家では毎年取り寄せ味わっている。遠方の親族にも産地から直送してきた
▼今年は収穫が早く9月中旬には親族宅に届いた。数日間は「おいしい!」「今年は早かったねえ」「香りが最高だよ」と電話による恒例のマツタケ談義もにぎやかに続いた。ところが先ごろ、そんなマツタケ称賛に浮かれていた人たちも、目をパチパチさせるような報道があった
▼「バカマツタケ」という正規の学名を持つキノコがあるが、肥料メーカーの多木化学(本社・兵庫)がこのキノコの完全人工栽培に成功したというのだ。投資家もその影響は「大」と読んだのだろう。同社の株価が翌日に急騰した
▼制限値幅の上限である「前日比1千円」高の6150円を朝一番に記録しそれを維持したのだ。季節を問わずにバカマツタケの大量栽培が可能になるのだから、身構えるのは投資家だけではなかろう。本家マツタケ産地も油断はできない
▼まずは今後の動静を冷静に見極めていきたい。

 2018年  10月  8日  ― いしがきに昭和の残響 ―
 いしがきミュージックフェスのトーク部門に呼ばれ、1980年代の盛岡のロック事情を話した。昭和の頃、市内にライブハウスはなく、まともに使える会場は岩手教育会館くらい。
▼当時ピストルズだのスターリンだのハードコア・パンクに狂っていた。東京から過激なバンドを呼びライブさせたら客が大暴れ、教育会館のホールがめちゃくちゃにぶっかれた。主催者として真っ青。すごく怒られたが貧乏だと思われ、修理の弁償代は少なく見積もってもらった。
▼会館の新築が決まったとき、県民的な施設として関係者の思い出を取材し、事務局で長かった人に電話した。リベラル革新系の催しの多い会館だったが、「申し込まれれば保守系の改憲フォーラムにもきちんと貸した」と聞き、言論の自由を尊ぶ運営に感銘。
▼話題は音楽へ。今は大御所のアーティストも皆ツアーは教育会館からだったと。しかし「中には困ったバンドもいて」との話に、ため息をつかれてしまった。こちとら「あのときの主催者です。すみませんでした」と、喉まで出かかったが…保守系の改憲フォーラムより、行儀の悪いパンクロックの方が頭痛かったろう。
▼あれから30年あまり。新しい教育会館前で盛岡に大きなフェス。自分もその分、歳くって。少年老いやすく楽、鳴りがたし。

 2018年  10月  7日  ― 「女性宣揚」無視した総理 ―
 安倍総理の官邸サイトで「『日本再興戦略』改定2014(成長戦略2014)の内容を、わかりやすく解説したページです」と前書きした記述を読んだことがある
▼上部に「人材の活躍強化〜女性が輝く日本!」とタイトルを書いている。安倍総理がかつてひとたび敗れ返り咲いた直後に掲げた「女性の活躍」宣揚の政策を、開花させていることが分かる。「宣揚」には官公庁をはじめ大企業などが女性の採用だけでなく、役職者への登用も含んでいる
▼安倍内閣が女性が家庭だけでなく、職場でも輝く日本にしたいという画期的な政策の旗を上げたのだろう。昨年11月に日本で開催された国際女性会議のスピーチでも、総理自身がその趣旨を語っている。「私は女性活躍の旗を高く掲げ成長戦略のど真ん中に位置付けました」と
▼以前から「おぼっちゃん総理」とやゆされる安倍さんが、そう断言した時には「大丈夫かなあ」と不安になった。多くの国民が案じたであろう。それでも今回の内閣改造では女性閣僚を増やすはず、と期待も寄せた。だが裏切られた
▼女性閣僚は4年前には5人いたが以後、改造のたびに3人となり2人になりついに今回はたった1人となる。総理が掲げた旗も信頼も落ち、最高指導者の無責任だけが浮かぶ。真に女性宣揚に働くトップがほしい。

 2018年  10月  6日  ― 貴乃花、王道から異端へ ―
 異端はもともと宗教での概念。辞書にはその時代や世界で正統と考えられている信仰や思想などから外れていることの意。ならば正統が絶対不変ではないことは明白で、正当とも正答とも言い切れない
▼貴乃花元親方が日本相撲協会を退職した。兄と同時期に横綱を張って若貴フィーバーの中心になり、大相撲人気を高めた功労者。横綱の初代若乃花をおじ、大関の初代貴ノ花を父に持つサラブレッド若貴兄弟は角界の正統の柱だったといえる。ところが、引退後に親方になってから協会の中で次第に立場が主流から外れていった感がある。協会の正統の中にある制度に改革を提唱。伝統や慣習などをめぐりぶつかることが何度も。少数派のまま、自身の考える改革は異端で終わった
▼横綱だった01年夏場所で右膝負傷のまま千秋楽に出場し場所優勝を決めた決定戦は、時の小泉首相が「痛みに耐えて頑張った。感動した」と表彰時に語ったこととともに印象深い。小泉さんは「自民党をぶっ壊す」の発言も有名だが、変人と言われ首相就任当初は党内で異端の主張が目立った。偶然とはいえ暗示的に思える
▼小泉さんは在任中、党の正統に異端を認めさせたが、今の党は派閥復権などまた変化した。平成の大横綱は、親方としては異端のまま平成後の時代を待たず角界を去った。

 2018年  10月  5日  ― 野分の季節に ―
 今月初頭には台風24号が暴れながら列島を北上
▼マンション5階の当家でも、荒れ狂う暴風が施錠した全てのドアも通過。強風は全室に入り室内で暴れ軽い物品を吹き飛ばす。その風害は屋内全域に及びガラス戸で仕切り物置き場を兼ねたベランダも、最大強風となった深夜には置いた物品も外壁にたたき付けられた
▼それらに広い網を掛けるなど、階下や近隣民家への落下防止には未明まで配慮を尽くす。無事故を確認できたのは早朝7時でしばしうたた寝をする。13時には24号が温帯性低気圧になったと報道がありようやく熟睡に入る
▼珍しく夢を見た。戦中から戦後の小中学生の頃は北関東の山間にある母の実家で過ごしたが、夢には当時のあれこれが浮上。毎年秋に台風に襲われたことまで再現された。祖父母が台風のことを野分(のわけ)と言ったこともリアルに描写された
▼野分は現代でも使う言葉で「山野の草を吹き分け走る秋の強風」のことで台風を意味する。野分は源氏物語や漱石の小説などにも登場し詩歌にも詠まれている。ここでは著名な俳人の面白い句を紹介する
▼芭蕉は「猪(いのしし)もともに吹かるゝ野分かな」と台風が猪まで吹き飛ばしているよと愉快に描く。台風下でものんびりと「ぽつぽつと馬の爪切る野分かな」と詠んだのは一茶である。

 2018年  10月  4日  ― レジームの異夢 ―
 第4次改造安倍内閣が発足した。在任は通算6年近く。中曽根、小泉と並ぶ大型政権として記憶されることになろう。「戦後政治の総決算」を掲げた中曽根さんは行革と電電、専売、国鉄民営化などを周到に実現。小泉さんは構造改革や郵政民営化に大なたを振るった。
▼安倍さんの場合、何をしたいがための長期政権なのか見えにくい。外交は一貫して対米協調だが、「戦後レジームからの脱却」などと聞けば改憲し、安全保障上の独立性を強める印象がある。
▼安倍はタカ派とみられ、「戦争を知らず勇ましいことを言うな」と年配者の反発が強い。祖父らの岸信介、佐藤栄作と顔がだぶるのか、安保世代も古い闘志をかきたてる。2度の総選挙を大勝で乗り切っても、議席獲得率すなわち安倍さんの支持率にあらず。不人気のままいつまでも続く不思議な政権となっている。
▼いよいよ次の国会に宿願の改憲案を出そうとしているようだ。それならそれ命懸けで国民に問いかけねば。衆参の審議から発議、国民投票までの政治日程に改元、参院選、東京五輪準備など立て込み、数の力をもってしても難関。
▼改憲は「戦後レジームからの脱却」の本命、安倍さんの夢だろうが、国民には異夢かも。時代の節目の総理には百年前の原敬のように、歴史と人間への洞察力がいる。

 2018年  10月  3日  ― 文化庁の国語世論調査 ―
 文化庁は平成7年度から毎年「国語に関する世論調査」を実施している。毎回言葉の時流を教えられ楽しみにしているが、過日は今春3月実施の29年度調査結果が発表された
▼今回も断片になるが時の流れで浮き沈みする言葉などを紹介したい。例えば「やおら」という言葉があるが、実際はどんな意味で使われているのだろう。調査では「急に、いきなり」の意味で使う人と「ゆっくりと」の意味で用いる人が目立ったという
▼国語辞典にも載っているから元来の意味は「ゆっくりと」なのだろう。調査でも60代以上の多くはその意味で用い、「急に、いきなり」は高齢になるほど使わないようだ。今は「急に〜」も若年層の感性レベルで一部に受けているのかもしれない
▼やがて若い人たちもその流れの中で洗練されて、いい表現を考案することだろう。調査でも全ての年代で「急に」への支持が減少傾向にあるという。全ての言葉は歴史の中で生まれたのだから、年配者も共感するような新語や新解釈を創作するといい
▼この国語の世論調査は子細に及ぶ。人間関係などの中で各自が占める「立ち位置」も丁寧に聞いている。回答で首をかしげたのは高齢層の4人に1人が「聞いたこともない」と答えていることだ。老齢者の寂しい孤立が浮かぶ。老幼共に存在感がほしい。

 2018年  10月  2日  ― 大谷選手が右ひじ手術を決断 ―
 本県出身のメジャーリーガー大谷翔平選手。打棒は当地も驚く実績を挙げているが、投の方は右ひじに故障が見つかり、今オフの手術を決断した
▼大谷選手が受けるのは右肘内側側副じん帯の再建術。手術経験のある桑田真澄さんが、打者としては問題のない故障とテレビで語っていた。事実、大谷選手は打者で出場し続けた。投手の投球は独特な動作になるため故障箇所に痛みが走るという
▼投打ともに一流になれる能力をメジャーで立証済み。打一本なら大打者にふさわしい成績を残せると予感させる。それでも大谷選手は故障を直して投手に専念するわけでもなく、二刀流を満足のいくまでやりたいのだろう。まだメジャー1年目の若い選手だけに、二刀流のための決断と応援する側も前向きに受け止めたい
▼運動選手は日常生活で使わない部位を使っていることが、桑田さんの話からも分かる。競技レベルを上げていくほど、その非日常性≠自分に課す努力が求められるということか。健康や楽しみのためのスポーツがけがを招くこと自体に疑問視する意見も聞く。しかし、極限に挑む人間の本性は止められまい
▼大谷選手が投手復活できるのは早くとも2020年だが伸びしろ十分の26歳だ。利き腕にメスを入れた村田兆治さんは引退後も現役並みの速球で驚かせた。

 2018年  10月  1日  ― 高齢者の運転免許証返納 ―
 高齢ドライバーによる重大事故が収まらない。運転歴がありベテランのはずだが、老化は判断を鈍らせ死傷事故なども起こしてしまう
▼今年2月にも印象に残る事故が続いた。1日には岡山県で70歳の女性ドライバーが、小学生の列に突っ込み9歳の女児が亡くなっている。18日には東京で元東京地検特捜部長が運転する車が暴走。はねられた30代の男性が命を奪われた
▼そんな悲劇が全国各地で発生している。70歳女性の不注意も79歳特捜部長の暴走も、老化で感覚が鈍っていたことに起因していよう。ここでは両氏の事故そのものは責めない。それより70代から想定される判断の鈍化を重視したい
▼この年代の人がなぜ重大事故前にそれを防ぐ唯一の手法である「免許証返納」に着目しなかったのか。それを強く責めたい。当方地元町内の「高齢者会」では、「免許証返納」をテーマに3年前から語り合っている
▼7人の返納経験者から「早まるな。慎重に」「大事故後でなく今」「70歳で検討開始」など、相反するようなタイトルも掲げて語ってもらっている。返納者7人のうち4人はこの会に啓発され返納に踏み切っている
▼免許返納は買い物や病院などへ行く足を奪う。この点は自治体なども重視して検討。一部ではバスやタクシーの運賃割引支援などが始まっている。

2018年9月の天窓へ