2018年12月の天窓


 2018年  12月  31日  ― 固有名詞の読みは難しい ―
 盛岡市先人記念館の企画「古町名」シリーズは今年度、「菜園 大沢川原かいわい」。同館学芸員による本紙連載が毎回好評だ
▼数年ほど前、大沢川原の読みが市民のちょっとした話題となった。正式にはおおさわかわらだが、おおさかわらと呼ぶ市民も少なくない。コラム子も子どものころ、おおさかわらと言っていた。正式の読み方を知ったのはパソコンで文章を入力するようになってからだった。おおさかわらでは正しい漢字変換にならなかった。地方の町名だから一発変換できず「おおさわ」と「かわら」の独立した変換と思いきや、入力する方が誤解していたのだ
▼きょうで最後となる今年は日本初の本格的政党内閣誕生から100年だった。首相は薩長出身ではなく、賊軍の汚名を着せられた旧幕側の盛岡藩出身の原敬。家から記念館が近く、子ども時分は「はら・けい」さんとして親しんでいた場所だ。だが、正式な読みはたかし。養子の貢さんと記念館設立頃の関係者で、記念館や日記が続くときには「けい」と呼ぶよう一応のルールが決められたと記憶する。賢治、啄木みたいに名前で呼ばれるより、原や米内は姓で呼ばれた方が収まりが良いのだが
▼平成は誕生する子の名の読みが難しくなった時代。新聞記事でも読めない名がしばしばで読み仮名が欲しくなる。

 2018年  12月  30日  ― 自動車運転免許返納 ―
 この一年、自分の一大事は何だったろうかとしばし顧みた。答えはすぐ出た
▼8月に自家用自動車を市内に嫁いでいる娘にプレゼントして、自動車運転免許証を夫婦同時に返納したことである。その後、『早まったなあ』と何度思ったことか。当初は「歩くことに徹して体を鍛えよう」と、プラス面だけを自分に言い聞かせていたが、それはすぐに崩れてしまう
▼早くも一週間後には「なぜ自分一人だけにしなかったのか」と後悔が始まる。例えば近くにスーパーがないことをなぜ考慮しなかったのか、と猛省が続くのだ。一時は「買い物には歩いて行く」と本気で考えていたのだから、軽率というしかない
▼つまりは近くのコンビニ利用で耐える暮らしに傾いている。それを見かねた娘が週1度ほど買い物の手伝いに通う始末である。仮に車を返してもらっても、すでにこちらは無免許だから免許証を取り直すしかない。それもいまさらあり得ない
▼これまでの人生で年末に悔いを語るのは珍しいが、8月の免許返納そのものが早すぎたと思う。これも老化の表れなのだろうか。今となっては返納の決意を新たにすべきなのだろう。「歩くこと」を徹底し、体力を鍛えることに本気で取り組もうと思う
▼来年もまた健康を第一に、快適な日々を積み重ねていきたい。

 2018年  12月  29日  ― ILCのソリューション ―
 日本学術会議が国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致に否定的な見解を文科省に答申した。そんな大筋が見えた段階で、達増知事や推進側の権威が危機感を語った。
▼県ILC推進協議会の谷村邦久会長は、「回答案で特にひどいと感じたのは」と、本音で前置きしつつ懸念を示していた。何年も先頭に立ち頑張ってきたから残念なのだろうし、自分も学術会議の考えを読み、「どうも感情的にILCを忌避している」と思う節があった。
▼だが週刊ダイヤモンド「日本人はもうノーベル賞を獲れない」を読むと学者たちの気持ちは分からなくもない。今の日本のノーベル賞ラッシュは、ほとんど過去の科学技術政策の果実で、現在の大学の環境ではもう世界的研究者を生むのは困難という。
▼江崎玲於奈氏は「今は基礎研究に対して『役に立たない』という不当な評価があります。当初から役に立つことを狙っているような基礎研究などあり得ません」と苦言を呈している。学識側にすれば、「基礎研究より実学的に即成果と言っていたくせに、今さらILCなど戦艦大和的な世界最大の長物かい」と不満があるのか。
▼国家予算をめぐる学界間の対立もあるかもしれないし、素粒子物理学の国際性を含め、大局的に調整するソリューションが政治判断に求められる。 

 2018年  12月  28日  ― 岩手競馬の危機克服 ―
 水沢ばかりか盛岡競馬場で禁止薬物反応が出て、1月7日までのレースが休止になった。岩手競馬が健全に存続できるよう、かつて乗り越えた苦難を関係者に振り返ってほしい。
▼12年前の2007年2月の県議会。県が競馬組合・盛岡・水沢両市に277億円を構成団体融資するにあたり、議会は真っ二つ。財政競馬の意義無しと廃止派、雇用を守るための存続派が会派を割って超えて対立して紛糾した。本会議の票読みは廃止派が紙一重で優勢と思われた。ところが票決では存続派が1票差で上回り、岩手競馬は命拾いした。誰が廃止から存続に一転したか調べると、平澄芳さんだった。
▼平さんは政治的にちょっと一筋縄でいかないようなところあり、県議会であまりお話することがなかった。その際もまさにダークホース的な動きで、議員たちは翻意をいぶかった。
▼本人は真意をあまり語らなかったが、「軽米町長時代の大水害を、県民挙げて助けてもらったことが頭をよぎったのだろう」と、皆で胸中を推し量ったものだ。99年の大水害に際し町長だった平さんは盛岡に来て「助けてください」と、あちこち懸命に頭を下げていた。
▼そんな県史を含め多くの人の誠意で存続した岩手競馬。平成最後のシーズンが無事、成立するよう、平さんをふと思い出してみた。

 2018年  12月  27日  ― 目も耳も大切に ―
 旧友というのはありがたい。半世紀以上も前に中学校で同窓だったK君もその一人で、夏季の旧盆前後と歳末には今も懇談を続けている
▼会えても特別な話題があるわけではない。双方ともに酒には弱いから飲みたいわけでもない。時が近づけばどちらかが電話をし「いつもの所で」と、手短に場所を決めて会い談論風発、近況などをあれやこれやと語り合うだけだ
▼今年は彼の方から連絡があり先夜、行きつけのすし店で懇談をした。冒頭に彼は「お互いに年をとったなあ」と切り出し、しんみりと「最近目が見えにくくなってさ」と眼科に通っていることを語り出す。水晶体が白濁し「白内障」と診断され年明けに手術をするという
▼いつも明朗快活だった彼が沈んでいたのはそのせいなのだ。それでも医師から「術後は眼内レンズによって視力は回復します」と説明があって安心したらしい。加齢とともに白内障を病む人は少なくない。でも今は術後に着用する眼内レンズが進化し「景色がうそのようにきれいに見える」と驚く人が多い
▼外界を見る視力も音を聞く聴力も日常生活で酷使しているから、人によっては次第に衰えていくのであろう。目も耳もより良い人生のためにあるのだから、見えにくくなり聞こえにくくなったらまずは早めに眼科や耳鼻科に行くといい。

 2018年  12月  26日  ― 27年ぶり無冠は王者の証し ―
 「羽生27年ぶり無冠」の新聞見出しが22日の紙面に載った。広瀬章人八段が新竜王になった見出しより大きく、記事も羽生善治さんが通算獲得タイトル100期を逃し無冠になった切り口でも手厚く報じられた
▼第31期竜王戦の7番勝負は第7局まで決着が持ち込まれ、21日決した。広瀬八段もまだ31歳。昭和62年生まれが平成最後の竜王に就いた
▼羽生九段はプロデビューも中学生時でトップ棋士になるのも早く、将棋界で最も有名な現役だが、まだ48歳。27年ぶりの無冠までずっと何らかのタイトルを保持していたことは強さの証明に他ならない。1996年には当時7冠だった全タイトルを独占。対戦ルールの違う全てでトップに立つのはオールラウンドに強さを発揮する希代の名棋士の証しだ
▼昨年から、将棋界は16歳の藤井聡太七段が中学生プロデビューし、しかも破竹の快進撃で時の人に。将棋界のみならず社会現象にもなり、将棋への関心も人気も高まった。中でも羽生さんとの対局は一番の話題になったように思う
▼囲碁界でも同様と思うが、いざ対局となればルールに年齢のハンデはない。今の若手棋士はコンピューターが日常の世代なことが鍛錬に影響している。新世代棋士として登場した羽生さんのこと。さらに研究しタイトルを再び獲得するだろう。

 2018年  12月  25日  ― 東条と鮎川義介とゴーン ―
 先日は東京裁判70年の記事で東条英機を取り上げた。コラムにもよく登場するので、「東条さん好きだね」と言われるが、そんなことはありません。ただ取材で指摘されたように盛岡の人は東条が岩手県出身か否か、きちんとした方がいい。輩出総理の顔ぶれで山口県と張り合うときだけ数え上げては、どっちつかずで東条さんに失礼だ。
▼どっちつかずと言えばカルロス・ゴーン容疑者も日本の経営者かフランスのやり手か、よく分からないままこんな事態になり東京地検に再逮捕。
▼東条と日産も因縁がある。戦前の満州国を牛耳った5人のドンを「2キ3スケ」と言った。関東軍の東条英機、国務院の星野直樹、総務庁の岸信介、日産コンツェルンの創始者鮎川義介、満鉄の松岡洋右の名前の末尾から。鮎川も戦犯容疑者に。
▼日産の事件もゴーン容疑者が自分の損失を機密費から補てんしたとか、満州舞台の謀略小説のような闇がのぞく。日本の捜査手法にフランスはじめ海外の反発が強まっているという。再逮捕に仏の顔も何度までか分からぬが、日本側に理があるならきちんと説明し事件を解明してほしい。
▼カリスマ性も信用も失墜してしまったゴーン容疑者。この前の東海新報のコラムも手厳しかった。さしずめ気仙の言葉なら「あとはフランス帰らいん」。

 2018年  12月  24日  ― 極地に向かう観測隊 ―
 最低気温はマイナス89・2度、平均気温でもマイナス10・5度にとどまる南極大陸
▼今、日本の観測船「しらせ」で第60次南極観測隊がこの極寒の地に向かっている。南極の現地の季節は夏だ。とは言っても温帯地方の夏とは比較にならないが、それでもこの時期に行く観測隊にとっては、冬季よりははるかに接近がしやすいという
▼ただ観測の目的によっては、現地の冬季を主眼にする場合もあろう。というより極地観測の現実には、冒険に似た選択が付きまとうのかもしれない。だから隊員の皆さんはそれを承知で、冬季も夏季も超えた深い使命感で臨んでいるのであろう
▼1911年には探検家の白瀬矗(のぶ)氏が、引き返してはまた迫り日本人初の南極到達を成功させている。1388万平方`bという広大な面積の極地に日本は現在、4カ所に拠点を持っている。1957年に開設した昭和基地は、観測活動の中心となり成果も上げている
▼69年には観測隊が宇宙から落ちてきた隕石(いんせき)を発見。「南極隕石」は世界で話題になった。観測隊は82年には地球の上空を覆うオゾン層に穴が開いていることを突き止め、これも世界的なニュースになった
▼「オゾン層に穴」の問題は、オゾン層の破壊を規制した「モントリオール議定書」(87年)に連動していく。

 2018年  12月  23日  ― 東京タワーの誕生日 ―
 故郷盛岡にUターンし東京を離れる間際に初めて東京タワーに行った。これを逃すと登らずに一生を終えかねないかと友人たちに付き合ってもらった。実は高所恐怖症で、展望台の床にある窓から下界を見た時の足のすくみと鼓動の速まりがよみがえる
▼徳川家菩提寺の増上寺は慶長年間に現在地の芝に移ったが、東京タワーは増上寺の敷地だったという。伝統の仏閣建築とテクノロジーを示す高さ333bの当時世界最高だったタワーとが一緒に収まる景観は、幕府と首都の歴史を象徴的に物語る。高層ビルが林立しようが東京スカイツリーが建とうが、曲線の見事なフォルムで高度成長の証人とも言える東京タワーへの都民の愛着は深い
▼リリー・フランキーさんの自伝的小説「東京タワー−オカンとボクと、時々、オトン−」は上京して暮らす主人公が、炭鉱町に一人暮らしする母を東京に呼ぶ話。映画ロケ地になったのが宮城県栗原市のくりはら田園鉄道線細倉マインパーク前駅と旧細倉鉱山社宅。ロケの状態が保存されている現地を見て、斜陽の炭鉱町は東京との対比で寂しさを思えた
▼東京タワーは天皇陛下と同じ誕生日。60年前のきょう完工式だった。赤の似合う還暦だ。映画のオカン役は今年75歳で死去した名優樹木希林さん。レンタルして見直してみようか。

 2018年  12月  22日  ― 八戸の店にハッとする ―
 矢幅駅西口にユニバースとサンデーの大型店が地域の新しい商業核となる。どちらも元は八戸資本で看板はおなじみ。隣の紫波町には八戸ルーツの土地柄がある。
▼近年の盛岡地域でのユニバースの展開をみると、東北本線とIGR線の駅勢範囲にスーパーを出店している。北は厨川駅、青山駅、南は岩手飯岡駅、紫波中央駅も。むろん広い駐車場は備えるが、もっぱらマイカー相手に従来の郊外型の発想ではないようだ。
▼八戸市に行って驚くのは、高架の八戸線が鮫駅まで、日常の足になっていること。似たような支線の山田線は盛岡市内でそう使われてはいないので、八戸の方が都会的に見えてうらやましい。
▼ユニバースも盛岡地域に、今後の駅利用の潜在性を大きく見込んでいるのか。高齢者の免許返上が増え、逆に若者はドライブを好まなくなり、車社会の限界が見え、鉄道利用の消費者増に将来性を含んでいるのか。
▼新産業都市として発展した八戸は、盛岡に比べ街並みはいささか味気ないが、公共交通は機能的に動いている。工場の街、浜の町であり、金遣いの感覚がこちらとちょっと違う。同じ県内の青森市、ともに南部の盛岡市が政治行政の中心で東京的な県都なら、八戸市は大阪的な商都。だから八戸の商いに、ときにハッとして脱帽する。
  

 2018年  12月  21日  ― 町内会のお父さん ―
 過日、親友の父上が他界し、自宅で営まれた葬儀に参列してきた
▼あらかじめ「家庭葬で行う」と知らせがあったが、小規模ながらも粛然として故人への温かな思いがあふれる告別式だった。中学生の孫娘による「おじいちゃん!」と語りかけるような弔辞も参列者の胸を打った
▼彼女は「おじいちゃんは町内のみんなから『町内会のお父さん』と呼ばれていました」とも語っている。確かにその通りで町内になくてはならない存在だった。選挙で選ぶ町内会長にも立候補者がいないと周囲から「お父さん」コールが始まり、故人はいつも「しゃあないなあ」とつぶやきながらも引き受けていた
▼孫娘だけでなく地域の子どもたちからも人気があった。故人は町内会の役員になった40代当時から、町内全戸訪問を心がけていた。自身が貧しい家庭で育ち苦労したからと、一軒一軒を訪ねて「困っていること」を聞き、子どもたちにも声を掛け会話をしていた
▼議員になりたいのかと誤解する人もいたが、「政治家には向いてねえ」と笑って否定してきた。町内には田園地帯があり間隔を開けて座椅子を置いた農道もある。これも故人が田んぼで働いていた老齢者の声に応えたものだ
▼政治家には向いていないと言う庶民の中に、政治家的な応答をしている人がいるのだから面白い。

 2018年  12月  20日  ― 増税シフトにゼーゼー ―
 来年秋の消費税10%に県内経済界も増税シフトに入っている。先日は軽減税率対応の記事に、食料品としての購入か、外食に買うのか、税率の違いは自己申告によることへの危惧が語られていた。正直に回答せず、ずるい人が得するようでは教育上悪いと。食料品購入による持ち帰りは8%、店内で食べれば10%になる。
▼国税庁の問答集にはホットスナックや弁当など、「顧客に対して店内飲食か持ち帰りかの意思確認を行うなどの方法で、軽減税率の適用対象となるかならないかを判定していただく」とある。
▼しかしコンビニのレジを通った後、顧客が空腹に耐えられず弁当を食べてしまったら。「家に持って帰るんでしょう。店の中で食べないで」と店員さんが言えるだろうか。むろん多くの人は正直に行動すると思うが、「買ったらもう食い得」という考えがまん延したら問題だ。
▼消費税増税以前に、多くの店が万引きの被害を悲しんでいる。ちりも積もればと1円10円の利益を必死に重ねても、高額商品を1個万引きされたら水のあわ。売り場では小さなモラルが一番大事。
▼問答集にはさらに細かいケースが書かれ、マニュアルで覚えるのは骨が折れる。お店が対応にゼーゼー言わないよう、消費者に周知がいる。本紙でも盛岡税務署のコーナーを設けました。

 2018年  12月  19日  ― 一日24時間の使い方 ―
 ある日、地球の自転と公転が急に速度を緩め、一日が4時間分長くなる。イラストレーター早川司寿乃さんの絵物語「桃源郷」は、長くなった一日の過ごし方に変化が出る短いお話だ
▼主人公の私は決まった時間に出勤して退社する女性会社員。勤務時間は変わらず、明るいうちに退社するリズムに1週間で慣れ、やってみたいと思っていたガーデニングをベランダで始めた。私と同じように仕事しながらやってみたかったことを始める人が増えていった
▼一年で最も日の短い冬至は今週末の22日。この時期は社内で気が付かないうちに外は真っ暗になっている。夜道を帰る生活では帰宅後に庭いじりなどは無理な話だが、夏至の頃だと明るいうちに帰宅できると得した気分になる。一日が24時間なのは変わらないのに不思議なものだ。高緯度の地域では白夜の時期がある一方で日中のかなり短い時期がある極端な環境に慣れた生活を送る
▼28時間になったとしても積み重ねていけば生涯の総時間は変わらない。だが一日28時間の配分は、特に睡眠時間はどうするかと心配になる。物語ではほどなく自転と公転の速度が元通りになる。でも明るいうちの帰宅を気に入った人が多数。では会社はどうしたか。働き方改革の制度は勤務の観点が主だが、生き方改革になるだろうか。

 2018年  12月  18日  ― 最近の気になるニュース ―
 何かと慌ただしい年の瀬には、心温まる話題がほしい。だが現実には真逆の報道が目立つ
▼14日には北海道釧路市の病院玄関前で無人の車が突然動き出し、診察を終え歩いていた近くに住む90歳の女性がはねられ全身を強打。間もなく亡くなるという悲しい事故が起きている。車は運転手がレバーをドライブに入れたまま降りたため、勝手に動き出し高齢女性をはね、他の車2台にも衝突している
▼勝手に動いた車の持ち主は病院職員で、降車時の基本操作を怠って車から離れていたという。お正月を楽しみにしていたであろう高齢女性の命を奪ってしまったのだから罪は重い。加害者となる病院職員は過失運転致傷の現行犯で逮捕されている。年末はいずこであれドライバーは厳重に注意をしたい
▼一方、九州佐賀市では副市長が出張した際に、その報告書を出張に同行した部下が提出していた「感想文」を丸写しして、上司に届けていたことが判明した。それも内容は部下が書いた「復命書(感想文)」の冒頭書き出し以外は、全文が句読点まで同じだったというからあきれ果てる
▼12月には自衛官の逮捕も相次ぐ。神奈川県では海上自衛官が複数個所の山林に放火。森林法違反容疑で7日に逮捕された。11日には岡山県で陸上自衛官があおり運転などの容疑で逮捕されている。

 2018年  12月  17日  ― 花巻から上海への風 ―
 「僕は上海だって何べんも知っているよ」とは「風の又三郎」のせりふ。来年1月、賢治の花巻と上海が空路で結ばれる。
▼賢治は富豪の子弟であることに原罪意識を抱いた。あくまで文学の話だが、50年前の上海では、富豪にえん罪が着せられた。文化大革命である。
▼当時の上海は解放から20年近く、魔都のネオンはとうに消え、貧しい灰色の街に沈んでいた。少数の資本家は遺産を食いつなぎ、古びた摩天楼に息をひそめて。文革では紅衛兵の格好のえじき。「上海の長い夜」に詳しい。著者の鄭念は、共産主義下に最後まで居残った西側資本のシェルに勤めた女史で、スパイとして投獄された。
▼盛岡に来た鄭さんに話を聞いたことがある。古代の暴帝さながらの毛沢東と一派が思想的暴力に酔いしれ、国家と人心と文化財を徹底破壊した内戦だった。犠牲者は千万単位といわれる。その文革の嵐さえ、栄毅仁らひとにぎりの資本家は生き延び、事業と財産を守り抜いた。それほど上海人は商魂したたか。先頭に立ち日本をしのぐ経済大国になったのも分かる。
▼とかく反日の中国だが上海と大連の市民は、昔から日本人の良さも悪さもよく知り大丈夫と言われたことがある。国の政治は難しくても、民間交流は大切に。花巻│上海線に乗り、この際じっくり話しゃんせ。

 2018年  12月  16日  ― 生命の保障が水道の大前提 ―
 酒どころに良い水あり。絶対法則とは言わないが、古くから酒蔵の集まるのは水に恵まれた地域が多い。盛岡地域も山脈近く水に恵まれた土地柄。豆腐の消費が多いのも、その恩恵でおいしい豆腐が造られてきた背景があろう
▼蛇口から出る水を当たり前に飲んで盛岡で育ち、進学で始まった東京生活では煮沸した水道水を飲んでいた。衛生面に問題はなくカルキ臭を抜く手段。当時、東京より親しんだ盛岡の水がはるかにうまかった
▼改正水道法が成立した。人口減を背景に基本は市町村が公営事業として担っている水道の安定的な供給を考えてとされる。海外には近くに井戸も沢もなく、はるばる給水に時間を掛ける国もあり、日本は恵まれている
▼この恵まれた環境が、将来おぼつかなくなるとなれば命に関わる一大事だ。将来予測の下に改正という趣旨は理解する。だが、国会の審査過程で疑義や懸念が出た。自治体の広域連携は先例があるが、民間に運営を委ねるコンセッション方式では、民間の論理として採算のため過重な利用者負担になるとも限らないし、突然の事業停止もあり得る。それを考えさせられる実例が雫石町で起きた。国会で指摘が出たように海外資本への譲渡も安全保障上のリスクが残る
▼法の運用では生命を保障する視点が重視されるべきだろう。
  

 2018年  12月  15日  ― 歳末に伊達直人を思う ―
 梶原一騎の漫画「タイガーマスク」の主人公は伊達直人だ
▼彼は自分が育った孤児院のために、覆面の悪役レスラーとして戦うがそれで得た収入を匿名で寄付し続ける。それによって伊達直人は悪役を演じながら、正義のレスラーとしての本領を発揮し成長していく
▼そんな物語だから読者を中心に青年層が「伊達直人」に魅了されていく。若い人たちの中から自分を「伊達直人」と名乗る風潮も広がった。歳末やクリスマスを意識して今ごろの時期には、その名義で福祉施設などに寄金をはじめ、菓子類やランドセルなどを届ける人もいた
▼それでも包装紙の表面に先方と申し合わせて「贈呈 伊達直人」と書いていても、裏面には実名や居住地などを書き添えていたのである。手渡しでも配送でもその心遣いを大事にしていたのだ。物を贈られ受け取った側がすぐしたいことは何か。「届きました」という報告やお礼は誰もがしたい
▼先方に連絡したいこともある。宅配便を利用する場合もそれが親しい間柄でも、送付者欄に「伊達直人」とは書けない。氏名も住所や電話番号も崩し文字ではなく、正確に書き「私が誰か分かる?」と言わんばかりに、受け手を悩ませることがないよう配慮をしたい
▼賀状も追い込みに入る歳末だが室内体操をしつつ、今年の仕上げをしたい。

 2018年  12月  14日  ― 条例違反のポスター掲示 ―
 政治・選挙関連ポスターは条例違反。盛岡市議会一般質問で明らかになった事実に、報道機関に籍を置く1人として恥じ入る気持ちを覚えた。公職選挙法に抵触するのではと感じた例は幾度となくあったが、市の屋外広告物条例の規定までは考えが及ばなかった
▼市議会では来年9月1日に任期満了の市長選に立候補予定者のポスターを上げての質問だったが、市の答弁によれば、それにとどまらない。市条例では選挙期間中の選挙ポスター以外の政治活動ポスターは設置に市長の許可を得なければならぬ。だが、07年の条例施行以来、政治活動ポスター設置許可の申請は皆無という。人目に付くのが目的のポスターなのに、条例違反を野放しにしてきたことに他ならない
▼かつて、マイナー映画の監督が上映会を計画し、ゲリラ的に上映ポスター掲示をしたことが盛岡地域でもあった。デザインが景観によろしくないと感じたが、違法な掲示だったようで市民の間でも話題になった
▼当たり前のように違反ポスターが目に付く状況は、行政が条例の趣旨の啓発に積極性を欠き、違反行為への指導が不十分だったことが要因となろう。市民に条例の内容が浸透すれば、無許可ポスターは違反していると市民に自ら告知しているに等しくなる。条例啓発にポスター活用も一手段か。

 2018年  12月  13日  ― ヒッピーとピッピー ―
 最後のポケベル会社の東京テレメッセージが来年9月でサービスを打ち切る。ポケベルが登場したての1970年ころ、「ピッピー族」なる流行語があった。電話でいつもピッピー鳴らされる人々。体制からドロップアウトした「ヒッピー族」をもじり、昭和元禄のモーレツ社員をからかった。
▼ポケベルは80年代に急速に広まり、90年代後半に携帯電話が取って代わり、そのケータイもスマホに駆逐され、IT社会は日進月歩。一見華やかだが、現在の高度情報化まで、現場は地道な苦労があった。
▼盛岡市の大平市兵衛さんの「情報通信システムの進化」を読めば納得。業界56年のベテランが、19世紀のグラハム・ベルの発明からスマホまで、電信電話の発展を著した。国鉄やJRなど「鉄道マン」を取材する機会は多かったが、電電公社やNTTを取り巻く「ダイヤル人生」の話も興味深い。
▼大平さんは、「昔は会社のみんなに持たせたものだが、もう公衆電話も少なくなって」とポケベル終了にしんみり。今はベルがピッピー鳴ったとて、返信に電話ボックスを探してもなかなか見つかるまい。
▼アイフォンを生み、スマホ時代を開いたアップルの創業者スティーブ・ジョブスは70年代、ヒッピーから身を起こしたそうな。ピッピーの昭和も遠くなりにけり。

 2018年  12月  12日  ― 国が休眠預金活用へ ―
 ある程度の額のお金を金融機関に預ける。その後、最初に引き出す時期は人さまざまだ
▼1カ月後には全額をおろしてしまうケースも珍しくないだろう。それは恥ずかしいことでもない。財布に入れたままより無駄遣いも減るだろうし、何よりも金融機関は安全でいい。それにしても預けたまま10年以上も取引がない休眠状態の預金が、国内で毎年700億円ほど発生するというのだから驚く
▼この預金は預けた人の転居や死亡などによって発生するとされ「休眠預金」と呼ばれる。国会もこれを重視して活用も検討。福祉や教育などの公益的な分野での活用案も織り込んだ「休眠預金等活用法」を成立させ今年1月1日に施行。公益分野での活用も来年1月から実施される
▼具体的には経済的に厳しい家庭の子どもたちに、食事を提供する「子ども食堂」の運営や若い人たちの自立を支援する分野のさまざまな活動などに、この「休眠預金」を充当することが想定されている。青少年の育成に役立つことになれば休眠中の預金たちも、新たな使命に目覚めるかもしれない
▼なお、預金があり10年以上出し入れも記帳もない通帳をお持ちで、できれば「休眠預金」への移行を避けたい人は年内に入金か引き出し、あるいは単純な記帳などで通帳に何らかの記録を残しておくといい。

 2018年  12月  11日  ― 溝は埋まるかCOP24 ―
 国力を強めるのは政治や経済というのが通説かもしれない。トランプ米大統領就任の頃から自国第1主義が顕著になったが、自国が良くなることを考えるのは普遍のテーマだろう。世界には逆立ちしても小国のままという国はたくさんある。ゆえに大国はのみ込んでしまうのではなく、多様な国が共存する世界をつくることにリーダーシップを発揮する方向に努めてほしい
▼こんな話を持ち出したのは国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP24)がポーランドで開かれているから。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」のルールブックを決められるかが焦点だが、この交渉はこれまでと同様、やはり難航している。自国第1主義の拡大は20世紀末に各国の歩み寄った情勢から遠ざかったように映る
▼地球温暖化問題は産業革命以降の化石燃料消費の増大が主要因。この経緯から、単純化していうと、排出削減は早くから温室効果ガスを多く排出し富を得てきた先進国と途上国とを同じルールに適用するか否かの主張の対立が存在する。双方が自分に有利な方向に導きたいはずだ
▼常識からすれば温暖化は「でっち上げ」ではなく進行している脅威。自国の主張に固執し破談になれば全世界にマイナス。SFのディストピアではないが、自国そのものの存立が危うくなる。

 2018年  12月  9日  ― 米内光政没後70年の「いずも」 ―
 政府が護衛艦「いずも」を空母に改装する計画を打ち出した。必要な装備であっても、中国と建艦競争するなかれ。海上自衛隊は商船の護衛に特化した世界に珍しい艦隊。戦後初の空母で、専守防衛を絶対に踏み外すべきでない。
▼「太平洋戦争で日本は航空機の時代が見えなかった」という指摘をよく聞くが、史実と逆。むしろ日本はゼロ戦や空母に入れ込みすぎ誤った。山本五十六が真珠湾攻撃で航空の威力を世界に立証したため、皮肉にも米国が切り札を手にした。銀翼の量産では日米に雲泥の差があったから。
▼戦局不利になり、海軍内で「戦艦大和を先頭にあえて古い大艦巨砲で戦った方が、米国も航空の力に気付かず、わが軍これほどの苦戦に陥らなかった。山本さんは玉より飛車のへぼ将棋を打った」とほぞをかんだそうな。もう海軍頼みにならずと、陸軍まで空母や潜水艦を作ったほど。
▼今後たとえ中国が原子力空母の艦隊を持とうが、まともに相手にしないこと。自滅を待つのも冷たいから、米国の虎の尾を踏めば昔の日本と同じ運命と、隣のよしみで忠告してやる方がいい。
▼今年は米内光政没後70年。米内の艦隊は揚子江で中国と対峙(たいじ)し、アジア情勢を冷静に見て国際協調派に。旗艦は先代の「出雲」だった。今こそ海の先人に学びたい。

 2018年  12月  8日  ― 年の瀬に戦時下歌人しのぶ ―
 年の瀬が近づく。老齢を重ねると自分の寿命も気になる時節である
▼今は人生百年時代といわれるが、諸病の来歴を顧みても当方は無理だなと冷めた見方に傾く。「ま、70代を全うすれば上々」と鏡の自分を励ます。それを隣室で耳にしたらしい家人が笑いながら言う。「あらあらずいぶん弱気ですこと」と
▼さらに「先日は中3の孫娘に『百歳は超えて花嫁姿見なきゃね」と言い、頬を崩していたじゃないですか」とまた笑いながら冷やかす。最後は「びしっと気合いを入れなきゃ、ほんとに早死にしちゃうよ」ととどめの一言を吐く
▼ここは気分転換をと年末のわが家恒例の茨木のり子の「歌札」読みを提案。「それがいい」と若いころから茨木の大ファンだった家人も乗ってきて、交互に札を読んだ。「ぱさぱさに乾いてゆく心をひとのせいにはするなみずから水やりを怠っておいて」
▼「駄目なことの一切を時代のせいにはするなわずかに光る尊厳の放棄」。いずれも中学生頃から読んできた人が多かろう。「自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ」と読み家人は「これ私のこと」と笑う
▼「わたしが一番きれいだったときまわりの人たちが沢山死んだ 工場で海で名もない島でわたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった」と札を読みわが家の年は暮れていく。
  

 2018年  12月  7日  ― 明治維新のイメージ一新 ―
 今年の維新150年や大河ドラマの便乗かもしれないが、最近は出版界に明治の元勲や志士を断罪する趣旨の本が目立つ。
▼東北や岩手のアンチ薩長史観と少し違い、「西郷隆盛は嫌なやつ」とか、「伊藤博文は殺し屋」とか、暴露的な文脈の本が多い。そういうたぐいの論調はどうも感心しない。太平洋戦争や日中戦争の意味をうんぬんするならともかく、ちょんまげの世の幕末や明治維新を今さら否定してもナンセンス。
▼なぞらえてみると、もうすぐ黒船が来て大変な時勢になる江戸で、「150年前、元禄の吉良邸討ち入りは無道にござった。忠臣蔵に忠義はあらぬ。赤穂浪士は悪党なり」なんて問答に明け暮れていたら。泰平の眠りにぼけていた人たちと、後世の笑いぐさだろう。妙なたとえだが歴史年表のスケールを繰り上げ、当てはめてみればそうなる。
▼明治維新や戊辰戦争は確かに「勝てば官軍、負ければ賊軍」だった。しかし敗者側だって以降の日本の近代化の恩恵は受けている。それには口をぬぐって、草葉の陰に向かってけちょんけちょんとは、いかがなものか。
▼そんな意趣返しでなく、明治維新を同時代の独伊の国家統一と比較するとか、戊辰戦争と米国の南北戦争を並べて論じるとか、世界的にイメージ一新の日本の夜明けを読んでみたい。

 2018年  12月  6日  ― 流行語年間大賞に方言「そだねー」 ―
 本欄には時々、岩手のお国なまりが登場し、県外の人には首を傾げられることもあろう。恒例の新語・流行語大賞の年間大賞が発表され、北海道の方言「そだねー」が選出された
▼「そだねー」を一躍有名にしたのは平昌五輪カーリング女子。スポーツの試合であれだけ会話が拾われるのは多くない。日本は男女とも出場し、女子が初の銅メダルという躍進でカーリング人気が一気に高まった。日頃スポーツに関心の高くない人も見るスポーツの祭典だったのが広く浸透した結果か。「そーだね」ではなくLS北見の「そだねー」は「もぐもぐタイム」とともに今年の冬季五輪で強い印象を残した双璧であったか
▼流行語大賞のトップ10にはスポーツ関係が4語入った。他はコンピューターゲームのスポーツ「eスポーツ」、サッカーW杯日本代表の大迫勇也選手の活躍にリバイバルした「(大迫)半端ないって」、そして不名誉なアマボクシング界の「奈良判定」だ。残念ながらメジャー1年目の大谷翔平選手の「翔タイム」、隣県秋田の夏の甲子園準優勝「金足農旋風」はノミネートまでだった
▼方言が年間大賞になったのは岩手の「じぇじぇじぇ」が印象深い。芥川賞「おらおらでひとりいぐも」は流行語大賞は逃したが、若竹千佐子さんには岩手なまり満載の新作を期待したい。

 2018年  12月  5日  ― ゆうパックの改善急務 ―
 子息に嫁さんを紹介した縁で、県南の農家の親御さんと親しくなり、米を購入するようになって十数年になる
▼日本郵便が民営化してからは、この県南の農家も毎回「ゆうパック」で米を送ってくる。出荷の際はマイカーに玄米を入れた袋を乗せ最寄り局へ届けたり、逆に局の担当者が車で集荷に来てくれることもある。農家が出荷した米袋の届け先が遠方なら、ゆうパックのトラックで中継もするのだろう
▼当方のように受け取る側は米袋の移動をひたすら待つ。ただ親しい間柄の県南農家の方からは、いつも丁寧に「○○日▽▽時ごろに着くと思う」と事前連絡をいただく。その上、当地の郵便局の配送担当者からも到着日の早い段階に連絡が入る
▼現在に至るまでおかげでトラブルらしいことはない。ただ報道などではまずは人手不足が指摘され、双方の連携不足なのか届け先が不在で配達者が2度3度と再配達に通うという。人手不足に過重労働が加わり若い社員から「体がぼろぼろです」と深刻さを聞いたことがある
▼それらは運営する日本郵便の緊急課題だ。社は今月3日に宅配ボックスを付けにくい家には袋を玄関先に付け、荷物を受け取る実験をした。実験は全国展開も検討中という
▼生産者と消費者という形で今後ともお世話になるので改革改善に期待したい。

 2018年  12月  4日  ― スネカはおっかない ―
 大船渡市のスネカがユネスコの無形文化遺産に登録された。8県10件の「来訪神」の一つ。子どもの頃、大船渡市の母の実家に行き、泣きやまないと「山からモーが来る」と叱られた。モーは毛むくじゃらの化け物という。大きくなり各地に「もんこ来る」と子どもを脅す似たせりふがあり、蒙古襲来の記憶の伝承と教わった。
▼モー、もんこ、蒙古のつながりは納得できたが疑問だったのは、元寇の恐怖なら山からより海から来るものでは。遠野のジンギスカン鍋を担ぎ、荷沢峠を越えて盛までやってくるモーなのやらと考えているうち、あほらしくなって忘れてしまった。
▼スネカをテレビを見て、これぞモーではと思った。元寇うんぬんより、吉浜のスネカの怖さが家々を通じて盛まで伝わり、聞き分けのない子どもを叱る決めぜりふになっていたのではないか。
▼他の来訪神を見るとスネカやなまはげと同じような風習が北陸や九州の沿岸部にある。民俗学的に関連性があるのか。ユネスコ登録で脚光を浴びるが、本来は観光資源でないことや、後継者不足など団体によって当惑もあるという。
▼「どごだりさ引っ張り出さないでけらいん」と言われるかもしれないが、この機会にスネカを内陸でも見たい。すねかじりのわらすは、盛岡辺りにもいっぱいいそうでねすか。

 2018年  12月  3日  ― 岩手リンゴの知名度アップ ―
 「きしやは銀河系の玲瓏(れいらう)レンズ/巨(おほ)きな水素のりんごのなかをかけてゐる」。詩「青森挽歌」の一片のように宮沢賢治は作品にリンゴを数多く登場させる。銀河系になぞらえたり、その匂いなどで臨場感を与える単語として多用した。賢治の時代と同様、現代も匂いで存在感を示す
▼国内生産量は青森県がダントツで半分以上を占める。次いで長野県、さらに差が開いて山形、岩手両県と続く。リンゴと聞いて思い浮かべるのは青森、長野というのが現状だ。だが、岩手での西洋リンゴ栽培の歴史は古く、1875年に始まったとされる。しかも他県輸出≠ヘいち早く、80年ごろには東京に出荷されたようだ。今は3番手、4番手に甘んじている
▼最近、本紙にリンゴの記事が続いた。ギフト専用ジャムの開発や多品種を扱う小売店のオープンは新たな楽しみ方の提案にもなっている。JAいわて中央は今年からカナダを加えて、4カ国・地域に輸出する。県内では「岩手アップル2weeks」が1日から展開中。県民に地元産をアピールしている
▼30年以上前になるが、盛岡の親戚が栽培していたリンゴを送った首都圏の友人が初めて食べ、長野産に慣れた舌でうまいと喜んでくれた。岩手産の人気が高まり農業者に反映されれば、賢治も喜ぶことだろう。

 2018年  12月  2日  ― お歳暮送料値上げから無料へ ―
 東京に住むいとこから、例年より1カ月も早くお歳暮が届いたのには驚いた
▼お礼の電話を入れて「びっくりしたよ」と言うと細君に代わった。彼女は「早すぎてごめんなさいね。でも事情があったんです」と笑いながら説明する。11月半ばごろから「今年は大手百貨店などがお歳暮の送料を値上げする」という情報が都内を駆け巡ったという
▼確かにネットでも11月24日のNHKサイトには「お歳暮の配送料、デパートで値上げ相次ぐ」との見出しで、今年はデパート各社の間で商品の配送料を値上げする動きが相次いでいると伝えている。同日の読売オンラインでは「値上げ相次ぐ配送料」に次いで「お歳暮離れ」の加速が懸念されると述べている
▼先のいとこ夫妻も周囲に「お歳暮予算は限度があるので」と値上げ分の件数を減らす人が増えていると嘆く。しょせんは客が離れては大手も成り立たない。百貨店業界も歳暮送料値上げが小手先の愚だと気付いたのだろう。商戦は意外な展開を見せている
▼高島屋のお歳暮オンラインストアは、全国送料無料を打ち出す。大手の三越も値上げどころか「お歳暮送料無料」を掲げる。西友に至っては「お歳暮最大40%オフ&送料無料」と客を喜ばせている。売る側も買う側も人まねではなく、個々に賢く判断し良い歳末にしたい。

 2018年  12月  1日  ― 平成最後の師走 ―
 平成30年も残すところ1カ月。平成最後の師走に入った。クリスマスという輸入文化は市民権を得て久しいが、新しい年を迎えるための12月には日本人ならではの心持ちがあると思う
▼「平成最後の」という言い回しが今年乱発した。来年4月末に天皇陛下が退位され、5月に皇太子殿下が新天皇に即位される。生前退位という明治以後で初となる改元の仕方ならではの産物だ。このような大々的な「最後」の使われ方は「20世紀最後の」以来ではなかろうか
▼改元に居合わせたのは昭和から平成への1回だけの昭和生まれだが、日本人の大半も同様。大正から昭和を知る方も100歳近くでないと当時の記憶はないだろう。106歳を超えるわずかのご長寿が3度目の改元を経験できる。改元が初めての若者も多いか
▼昭和天皇が重篤なご容態になり、国内に自粛ムードが広がったのは1988年秋からだった。新年のお祝いも慎ましく89年を迎えた1月7日に崩御された。2月24日に大喪の礼が営まれ、そんな事情から新天皇の即位も祝賀とは違った
▼陛下は今月23日、天皇として最後のお誕生日を迎えられる。退位が決められているため、すでにご公務に「最後の…」と報じられている。これからも皇后美智子さまとともに「最後の…」のご公務をされる残り5カ月となる。

2018年11月の天窓へ